研究実績の概要 |
加速器中の荷電粒子ビームの解析においては、計算機の能力が向上した現在でも、膨大な粒子数をそのまま扱うのは難しく、系の自由度を減らして解析することが必要となっている。系の自由度を減らして荷電粒子ビームを表現する方法として、幾つかの荷電粒子を一纏めにして質量電荷比を保存した新たな古典的な点電荷(マクロ粒子)の集まりとしてビームを表現する方法が広く使われている。このときに重要となるのが、元のビームの性質が保たれる自由度の数はいくらなのかということである。この問いに対して、本研究では、統計力学の手法を規範として、ビームの運動状態の精度(位相空間の分解能)と系の自由度の数の関係を明らかにすることを目的としている。本研究は、1.位相空間分解能と自由度の数を定量的に評価する手法の開発、2.静的な荷電粒子分布に対する解析、3.時間発展する粒子分布への拡張、という3つの段階で実施された。 平成26年度は、マクロ粒子数を減らす操作を定式化するための新たな手法として、二粒子対変換を定義・導入し、その有効性を検証した。この変換を用いることで、粒子数の変換性を定量的に評価することが可能となった。 平成27年度は、この二粒子対変換を用いた数値計算コードを開発し、1次元と2次元の荷電粒子分布に対して、その分布が作る静電場が変化していく過程の定量的な評価を行った。 平成28年度は、時間発展する粒子分布に対応するために、数値計算コードの拡張を行った。このコードを用いた解析により、位相空間分布の時間発展に対する粒子数の影響は、分布中央付近では小さいが、端部において顕著に現れることが確認された。本成果については、線形加速器国際会議(LINAC 16, 米国)及び日本加速器学会年会(2016年)にて報告を行った。 本研究で得られた知見を基に、荷電粒子ビーム数値計算の効率的な精度向上を目指すことが次の課題となる。
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