研究課題/領域番号 |
26600152
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
齊藤 慎司 名古屋大学, 理学研究科, 特任准教授 (60528165)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 計算物理 / 宇宙物理 / プラズマ粒子シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究ではメニーコア演算器であるXeon Phiをプラズマ粒子シミュレーションコードへ実装し、演算高速化を実現することを目的としている。プラズマ粒子シミュレーションコードはプラズマ中の荷電粒子を超粒子として扱い、電磁場中の個々の粒子軌道を追跡すると共に、それによって生じる電流場をマクスウェル方程式を介して電磁場へフィードバックすることで、プラズマの運動論的性質を含んだ物理現象を再現する。この多数粒子計算をXeon Phiのメニーコアで実現するとともに、ベクトル化およびキャッシュチューニングに配慮したコード開発に挑戦している。 当初の計画としては「非同期転送手法」を用いてノード内での大容量メモリ演算を実現することを想定していたが、メニーコア演算器との通信がそれほど速くないこと、また最近のXeon Phiがマザーボードに搭載されたことから、将来的にはメニーコア演算器内にあるメモリ上で演算を行うことが重要であろうという認識に至った。このため主な演算はXeon Phiのメモリ上で可能な限り閉じるようにすることに加え、大規模演算に必要なノード間並列の際に必要なデータのみをホスト上のメモリへアップロードし、MPIによるノード間通信を実現出来るような設計で開発を行った。また、Xeon Phiとホスト間でのデータ送受信は非同期で実施し、データ転送時間の隠蔽を実現した。演算効率については、粒子軌道演算のみであればホストCPU(Intel Xeon E5-2650v2(2.6GHz)×1CPU(8Core))以上の演算速度が実現出来たが、電流計算を加えた場合、Xeon Phi1枚(1.1GHz, 57core)ではCPUを上回ることが出来ていない。29年度はこの改善を考察することに加えノード間並列を実現し、プラズマの運動論的乱流の非線形発展に関する大規模演算を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
粒子シミュレーションコードの性質上Xeon Phi上での演算効率が当初想定していたレベルまで到達させることが難しいことが次第にわかってくるようになり、その改善策について模索することに多くの時間を費やしたことが原因であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ノード内においてXeon Phiを用いた演算についてベクトル化やメモリアクセスの効率化を模索するとともに、平行してノード間並列を加えた大規模演算が可能になるようなコード開発を実施する。また将来的にPCIeを介したメニーコア演算器がメニーコアCPUへ置き換わることを想定し、そのようなシステムの中でも実行可能なマルチスレッド型の粒子シミュレーションコードの開発を進める。また、将来的にプラズマ物理研究に生かせるような計算コードを本研究の成果プロダクトに出来るように開発・研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
名古屋大学のスーパーコンピュータ(cx400)を用いて大規模演算を実施する予定であったが、Xeon Phiのノード内演算効率化に想定以上の時間を費やしており、スーパーコンピュータによる大規模計算まで至らなかったため、計算機使用料が未使用となり次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
年度前半中に大規模演算が可能な粒子シミュレーションコードの開発を完了することを想定している。このコード開発後、スーパーコンピュータを用いた大規模演算を実施するため、その計算機使用料として使用する計画である。
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