研究課題/領域番号 |
26600153
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西脇 眞二 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10346041)
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研究分担者 |
山田 崇恭 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30598222)
泉井 一浩 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90314228)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 構造最適化 / トポロジー最適化 / 流体解析 / 弾性解析 / マルチフィジックス / 粒子法 |
研究実績の概要 |
本研究では,流体力による発電システムにおいて発電効率を抜本的に改善することを目的として,流体の流速ならびに圧力に応じて最適な形状へと自動的に変化する潜在的機能を持ったスマート翼構造の創成設計法を開発する.すなわち,流体力による構造物の力学的変形を積極的に利用し,時々 刻々,最適な形状へと自動的に変形する構造を創成設計するために,流体力学の領域と構造力学 の領域の物理的変化とその連成関係を同時に考慮できるトポロジー最適化の方 法論を構築する. 本年度も引き続き,流体解析において粒子法による解析手法の検討を実施した.粒子法は,連続体を剛体粒子の集合として模擬し,それらの相互関係の変化によって連続体の変形を記述する.粒子法の利点は,ラグランジュ法に基づく手法であるために支配方程式に対流項が存在しない.したがって, 有限要素法や有限体積法のような離散化の過程で生じる複雑な手続きは一切必要としない. また,自由表面を扱えるという利点があり,粒子法による状 態場および随伴場の解析が可能となることで,最適化の対象領域は,より広くなることが期待でき る.粒子法の代表的な手法として は,Smoothed Particle Hydrodynamics法(SPH 法)やMoving Particle Semi-implicit法(MPS法)がある.本年度は,解析対象を非圧縮性粘性流れとして,その対象に対して妥当なMPS法を用いた実装法について文献調査により具体的に調査検討を実施した.また,粒子法による流体解析手法と比較検討を実施するために,オイラー法に基づく手法についても検討を実施した.この検討に際しては流体解析には有限体積法を採用した手法を提案し,大規模問題や乱流モデルの適用,さらには複数の目的関数も扱える方法論への展開も図った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流体解析に粒子法を用いたトポロジー最適化の方法論を構築するために,粒子法の理論について文献調査を実施し,全般的に理解できた.トポロジー最適化の過程において,流体解析のみならず,感度解析に必要な随伴場を計算するために随伴方程式の数値解析が必要となる.この随伴方程式が粒子法での解析の可否が本研究における一つの課題となるが,文献調査,理論検討により概ね解析が可能であるという結論が得られた.さらに実装及び検証を簡単にするために非圧縮性粘性流れに限定し,それの解析により適しているMPS法による実装を検討した 粒子法に基づく流体解析手法については,フリーの連続体解析ライブラリ OpenFOAMを用いることにより,その手法の有効性を検証するための実装を効率よく進めている.また,ほかの数値解析手法との比較検証を実施することを目的とし,オイラー法に基づく方法論を構築してシステムへの実装をすることがで きた.このオイラー法に基づく手法については,学会を通じて手法の適用範囲や有効性について十分に議論できた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,粒子法による流体解析を用いたトポロジー最適化の具体的な方法論の構築を目指す.流れの適用範囲としては,非圧縮性粘性流れとしオイラー法では実装が不可能であった自由表面も考慮した手法を検討する.粒子法による流体解析に ついては,SPH およびMPSによる手法が提案されているが,本研究では非圧縮性粘性流れに適しているMPSによる流体解析法をそれぞれ検討し,その有効性を検討する.現 在までに実施した文献による調査によれば,MPSは物理量の勾配,発 散等をテイラー展開により近似して,連続の指揮を満たすように解析しているため,SPHと比較して収束性に優れていると推測している.また,圧力項の解析で 不安定性が懸念事項であったが,文献調査によりこの問題も解決しつつある. この推測を検証するために,それぞれをトポロジー最適化の方法に実装して,検証用の事例を適用して考察する. 次に,構造領域の解析と,流体と構造の連成関係も解析可能なように粒子法による方法論を拡張する.構造力学問題においては,大変形をも考慮可能なように超弾性体を適用範囲とした方法論の構築を目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度,数値計算および最適化のための高性能コンピュータの購入を予定していたが,本年度は主に理論構築に重点を置き,高性能コンピュータの購入を見送ったため.また,成果発表のために予定していた国内・国際会議の発表も,理論の検討段階であったために見送ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,本年度に構築した理論のもと,プログラムの実装をさらに進めるとともに,流体・構造の連成解析に基づくトポロジー最適化を実施するために,数値計算および最適化のための高性能コンピュータを購入する.さらに,成果発表のために国内会議,および国際会議に参加する予定である.
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