研究実績の概要 |
平成28年度も引続き (1)現在の実装方式の性能評価, (2)アルゴリズムの改良, (3)GPUを用いたプログラム設計, という研究計画を立てた. このうち(2)については, 適切な近似計算値を用いると演算量を軽減できるという所まで理論的検討を進めて来ているが未だ完成には至っていない. これと並行して, 平成27年度報告に記載した通り, 本研究の原点であるアルゴリズムの自動微分に関するここ数年の発展を受けて, 絶対値演算abs(x)を含むプログラムで定義される関数の x=0 における微分を系統的に実行するための処理系の試作と分枝限定法を利用した最適性判定アルゴリズムの提案と実験に関する技術報告書をまとめた. これを再構成して2016年9月にイギリス・オックスフォード・クライストチャーチで開催された「第7回アルゴリズム微分に関する国際会議(AD2016)」での研究発表を申し込んだところ受理されたので, 同会議に参加・講演発表した. この会議はアルゴリズム自動微分全般に関する国際会議であり, 本研究に関連する幅広い研究に関する発表を聞き, 情報収集することができたことは大変有意義であった. ここでの発表内容は上述したようにいわゆる劣勾配に関連する研究であるが, 高階微分に関連して本研究との直接的関係も深く, 本研究への適用方法について検討中である. また, 以上のように全般的に当初予定よりも研究が遅れているため, 研究期間の1年延長を申請し, 平成29年度も本研究を続行することとしている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予定の研究計画についてはこれまでと同様の状況であるが, 新たに「区分的微分可能関数に関する劣勾配の系統的計算方法」に関連する研究にも着手し, 国際会議で発表するなどの進展があった.しかしそれと対比して当初予定の研究遂行が遅れているので, 実施状況は上記のように進展したものと相殺して「やや遅れている」と評価する.
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針は個別にGPUを積んだPC約100台を並列に動作させて, 本研究で提案するアルゴリズムの並列実行を実施し, GPUを利用しない場合の100台の並列実行時と比べて性能の向上の程度を見極め, 本アルゴリズムの現技術での限界サイズを測定・推定する. 理論面での検討を技術報告の形でまとめる. さらに, 着手した絶対値演算を含む区分的微分可能関数のに基づく手法を, 切断べき関数や平方根などを持つ関数に拡張する研究を行う.
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