セルオートマトンは独立変数のみならず、状態変数も離散的である数理モデルである。セルオートマトンの数理構造を明らかにする試 みとして、Wolfram による1次元セルオートマトンのクラス分類など、数多くの研究が行われてきている。我々のグループは超離散化 の手法によって1次元ソリトンセルオートマトンが偏微分方程式と対応づけ可能であることを示してきた。その際に大きな役割りを果 すのは Max-Plus 代数であり、1次元ソリトンセルオートマトンの方程式、解とも Max-Plus 代数を用いて表すことができる。1次元ソリトンセルオートマトンは無限個の保存量の存在という特徴を持つが、一般の1次元セルオートマトンは少数の保存量しか持たない。 近年我々は、粒子数を保存量として持つ1次元セルオートマトンにおいて、Max-Min-Plus 表現が有用であることを発見した。2016年度、 その結果を粒子数以外の高次の保存量を持つ1次元セルオートマトンに適用したところ、同様に Max-Min-Plus 表現が有用であること を発見した。具体的には、2次の保存量を持つ1次元セルオートマトンの発展方程式の Max-Min-Plus 表現を得ることができ、その確率化にも成功した。一方、粒子数を保存する1次元多値セルオートマトンの中にも同様のクラスが存在することも発見した。 2017年度はこれらの結果を一般化する代数的枠組みの構築に取り組んだが、個別事例を統一的に扱う理論的な枠組みの構築への手掛りがまだ掴めない状況にある。統一的理論構築のためには、いったん研究全体を総括し、研究の新たな方向性を模索する必要があると認識している。
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