研究実績の概要 |
リー群の分類に本質的に用いられるルート系や鏡映群はそれら自身が興味深い研究対象である。本研究の目的であるSommers-Tymoczko予想の一部はすでに我々が肯定的に解決しており、現在印刷中である(JEMS 2016)。昨年度は同予想の残る部分の最終解決を目指したが、本年3月末までに果たせず時間切れになったことは悔やまれる。以下、昨年度の研究活動を振り返る。
夏にドイツチーム(Roehrle, Cuntz, Hoge)と研究打合せを行った際、ルート系に対応する鏡映配置(Weyl配置)の組合せ的構造が当初の予測よりも複雑であることに気づいた。たとえば、$D_{\ell}(\ell \ge 5)$型においては、$A_{1} \times A_{1}$型のedges全体が鏡映群の作用により単一の軌道を成さず、複数の軌道に分解することに気づいた。これは今まで知られていなかった困難を招来する。すなわち、鏡映配置を$A_{1} \times A_{1}$型のedge $X$ に制限して得られる制限配置は組合せ的に異なるかも知れず、実際、$D_{\ell}(\ell \ge5)$においては、制限配置の濃度自体が$X$ に依存している。これは問題の困難さを示唆している。また、11月に米国チームのSommersと研究打合せを行った際にも、Sommers-Tymoczko予想の完全解決を阻む別の難しさが見えて来た。結果的に本研究の最終目的に到達できなかったのは事実ではあるが、問題の難しさが見えて来たことは我々の理解が進んだことを示しており、その意味では、本研究の本来の目的に近づいたと言い得る。今後も本研究が私、あるいは他の研究者によってさらに大きな進展をとげることを期待している。
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