研究課題/領域番号 |
26610002
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮本 雅彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30125356)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 頂点作用素代数 / 軌道予想 / 単純群 / 5次交代群 |
研究実績の概要 |
頂点作用素代数は、散在型有限単純群の中で最大位数を持つモンスター単純群と楕円モジュラー関数との神秘的な関係から生まれており、その解答として与えられたムーンシャイン頂点作用素代数はモンスター単純群を自己同型群として持っている。それゆえ、ムーンシャイン頂点作用素代数とモンスター単純群の真の関係を調べるためには、軌道理論の研究が欠かせない。特に、ムーンシャイン頂点作用素代数の性質が軌道理論においても成り立つことは非常に重要である。このような有限型頂点作用素代数の有限自己同型群による軌道理論も有限型となるのではないかという軌道予想はかなり昔から考えられていたが、特別な頂点作用素代数の、しかも自己同型群の位数が2という非常に特別な場合にしか示されていなかった。しかし、研究代表者の昨今の研究によって、自己同型群が可解であれば、この予想が正しいことが示された。それ故、残された問題は非可解単純群を自己同型群として持つ場合であるが、この差は非常に大きい。特に、これまでの頂点作用素代数の研究において使われている手法は、rigidity, associaitivity, strictness などは自明でない1次指標を持つ場合に使うことができる手法なので、単純自己同型群に対しては使えない。そこで、群の指標の知識を駆使することで、特別な指標がある場合には、これらの手法が使えることを見つけた。それにより、最も小さな非可解単純群である5次の交代群の場合には、計算可能な弱い条件の下で、有限型の軌道予想は正しいことを示した。この結果は、平成28年3月の台湾における研究集会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進展の鍵となる5次の交代群に対する予想が解決したので、他の単純群に対する手法の一端が見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年において、交代群すべてに対して軌道予想を証明することを目標とする。また、その方法を発展させて、非常に重要なモンスター単純群に対しても軌道予想を証明したい。その為に、夏頃に開催される台北での研究集会に参加し、Dong教授や Lam教授と議論する。また、その応用も含めて、10月に名古屋で開催する研究集会に関係した研究者を招聘し、議論を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、名古屋大学の金銅氏と共にかなり大きな研究集会を計画しており、海外から本研究課題に関連した研究者が多数来るので、彼らを筑波大学にも招聘するために、残した。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年であり、現在出ている非常に良い結果を、夏の台湾での研究集会、秋の名古屋での大きな国際研究集会で発表する予定である。また、A5以外の単純群に対する論法を発展させるために、有限群の表現論の知識が必要であり、熊本大学の千吉良氏、千葉大学の北詰氏、室蘭工大の竹が原氏と研究連絡を取る計画である。以上の計画を進めるための旅費や謝金として使用予定である。
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