頂点作用素代数は楕円モジュラー関数の係数と散在型有限単純群の中で最大のモンスター単純群の指標との神秘的な一致から生まれたムーンシャイン予想を解決するために1986年のBorcherdsによって導入されたものであるが、現在では共形場理論を数学的かつ代数的に厳密化したものだと理解されている。ムーンシャイン予想の解答として与えられたムーンシャイン頂点作用素代数は自己同型群としてモンスター単純群を持つか、その関係を詳細に調べるためには、部分頂点作用素代数の表現を調べる必要がある。この部分頂点作用素代数の表現と部分群との関係を正確に記述するためには、モジュラー不変性とともに、C2有限性や有理性などを示さなければならない。 研究代表者は、この研究を通して、有限位数の自己同型に対する軌道予想の大きな2問題のうち、C2有限性の証明を行い、論文として発表した。 最終年度の平成28年度においては、 (1) スコット・カーナハンと共同で、有理性(加群がすべて完全可約であること)の証明も行い、論文「Regularity of fixed-point vertex operator subalgebras」としてh投稿した。この結果は、有名な一般ムーンシャイン予想を解決するために絶対必要な結果である。また、昨今注目されている中心電荷24の正則共形場理論の構成において使われている軌道理論においても、必要な結果であり、非常に高い評価を得ている。 (2) さらに、有限単純群のうち、交代群A_nという特別な指標を持つ自己同型群に対しては、内部テンソル積の概念を導入し、ボーチャーズ恒等式など良い性質が成り立つことを証明し、海外の研究集会(台湾台北市 Academia Sinica)において発表した。
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