今年度は、被覆群を含む古典群のSiegel-Eisenstein級数の研究に端を発したGross-Keating不変量の研究が進展した。とくに、2次形式に対して定義されていたGross-Keating不変量はエルミート形式に対しても定義することができ、さらにエルミート形式に関する簡約定理を証明することができた。一方、エルミート形式のGross-Keating不変量に関しては、Gross-Keating不変量が0のエルミート形式が常に極大になるなど,2次形式のものと異なる様相を呈することが明らかになりつつある。これは室蘭工業大学の桂田英典氏との共同研究であり、この研究成果については現在共著論文を執筆中である。また、2次形式のGross-Keating不変量とSiegel級数に関する結果を2016年7月11日~15日に台湾で開催された国際研究集会「Pan Asian Number Theory Conference 2016」で発表した。この国際会議にはオーガナイザーとして開催にもかかわった。このほか、Gross-Keating不変量については2月に早稲田大学で、佐藤文文氏、広中由美子氏らを交えて桂田氏と討論を行うなど、現在でも活発に研究活動を行っている。また、外国人特別研究員のSungmun Cho氏も研究に加わり、数論幾何への応用などについて研究を進めている。 一方、Kohnenプラス空間に関する結果を2016年10月20日~23日に韓国で開催された国際研究集会「International Conference for the 70th Anniversary of Korean Mathematical Society 2016 KMS Annual Meeting」における招待講演で口頭発表した。このように被覆群の表現論の研究も進展している。
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