研究代表者が導入した頂点代数の随伴多様体は、頂点代数の重要な幾何学的不変量であり、有限次元半単純リー環の普遍包絡環の原始イデアルの随伴多様体のアナロジーである。
頂点代数の随伴多様体はアフィンポアソン代数多様体として定義される。随伴多様体が点になるとき、頂点代数は平滑(lisse)と呼ばれ最も良い性質を持つことが知られているが、必ずしも平滑でなくても興味深い頂点代数が多数存在する。その典型的な例が許容アフィン頂点代数であり、対応する共型場理論は数学者・物理学者双方から注目されている。一方、最近のRastelli等による4次元-2次元対応により、許容アフィン頂点代数以外にも、同様な性質をもつ頂点代数の存在が明らかになってきた。これに関して、我々は許容アフィン頂点代数を拡張する概念として擬平滑頂点代数を導入し、さらに擬平滑頂点代数の指標がモジューラ微分方程式を満たし、従ってある種のモジューラ不変性を持つことを示した(川節和哉との共同研究、論文投稿中)。これは、4次元のN=2超対称性共型場理論から期待され、しかも物理学者が示し得なかった結果である。また、頂点代数の随伴多様体は、普遍包絡環の原始イデアルの随伴多様体場合とは異なり、必ずしも既約とはならないことが、擬平滑頂点代数の場合にはその随伴多様体が既約であることを予想し、これをW代数の例で確かめた(Anne Moreauとの共同研究、論文投稿中)。
これらの結果についてプリメータ研究所(カナダ)で行われた物理の研究集会で招待講演を行い、好評を得た。また多数の国外研究集会、セミナー、談話会でも招待講演を行った。
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