研究課題/領域番号 |
26610007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永友 清和 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (90172543)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共形代数 / リー代数 / 頂点代数 / 保型形式 |
研究実績の概要 |
ドイツ連邦共和国マックス・プランク・数学研究所の主任研究員であるDon Zagier教授と共同研究することにより共形代数の圏とリー代数の圏の同値性を得た。これにより現在まで無限次元の複雑な対象とされていた共形代数がリー代数という深く研究されている数学的対象の部分圏の研究に帰着されたことに重要性がある。
共形代数は数理物理学における作用素展開の方法を数学的に記述するために導入された比較的新しい代数系である。しかしながら,物理学に由来するために無限個の積を備えており,その積構造の解析は容易ではない。一方,リー代数は無限次元の場合も含めて深く研究されている。本研究では共形代数をprimitiveな要素で表示することにより,共形代数の公理をprimitiveな要素で表現し(一見,本来の公理より複雑に見える),その共形代数の公理の表現からリー代数を構成することに成功した。これにより,無限個の積が必要とされていた共形代数の公理をリー代数の括弧積一つで表示することが可能となった。
上述の成果により,共形代数の分類理論はリー代数の分類理論に帰着される。共形代数の分類理論は特別な状況下を除き知られていないので,今年度の研究は共形代数の分類理論の研究へ重要な貢献をすると期待される。さらに,コンパクトでない共形代数(primitiveな要素で構成されない)から得られるリー代数はコンパクトな共形代数(primitiveな要素で構成される)に対応するリー代数の中心拡大であることを証明した。この事実は既存と異なる新しいリー代数の中心拡大を与えていると考えられる。以上のように,研究計画に沿って研究目的の大部分を達成することができたが,未だリー代数の分類を用いた共形代数の分類達成には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
共形代数(コンパクト,非コンパクト)の圏とリー代数の部分圏との同値を証明したことは交付申請書に記載した第一の研究目的を達成したものである。これは同時に圏同値となるリー代数の部分圏を特徴づけことに成功したことを意味する。また,コンパクトとコンパクトでない共形代数の対応するリー代数が互いに中心拡大であることを示した成果は研究目的として記載した内容を超える成果である。
しかしながら,上述の圏同値により共形代数の分類理論はリー代数の分類理論に帰着されたが,共形代数の分類理論には依然として着手していない。したがって,共形代数の分類理論を達成することが今年度の研究の重要な目的であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
共形代数の分類理論はリー代数の分類理論に帰着されが,共形代数の分類理論依然として達成されていない。したがって,共形代数の分類理論は今後の研究の重要な目的である。また,共形代数においては超共形代数と呼ばれる超対称性をもつ共形代数がより興味深い構造をもつと考えられている。前年度の研究成果から超共形代数に対応するリー代数は超リー代数と予測するのが自然である。よって,超共形代数と超リー代数の圏の圏同値を証明することを目的とする研究を実施する。
研究実績で得られた成果にもとづき,この研究過程で構築した手法は共形代数のみならず,頂点代数にも応用可能であることが徐々に解明されつつある。現時点までの研究で頂点代数と共形代数との間には極めて類似した関係があることが徐々に解明しつつある。この事象は頂点代数がリー代数と結合代数とを用いて表現可能であることを示唆するという驚くべき事実を暗示している。
今後は,以上で述べたように共形代数の分類と頂点代数のリー代数と結合代数を用いた特徴づけを主たる目的とする研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機関係の記憶媒体の購入を控えたため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は計算機関係の記憶媒体の購入に充当する。
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