研究実績の概要 |
Donaldson-Sun は両側からRicci が有界なケーラー・アインシュタイン多様体の無限列のGromov-Hausdorff極限の性質を調べ,極限は正規代数多様体であること,接錘は一意的であること,接錘の正則部分は佐々木・Einstein多様体の錘であることを示している.Cheeger-Coldong に始まるRicci limit space の理論では,接錘の性質を極限空間の性質に反映させることが議論の大筋である.その意味で,極限空間の接錘についての研究が第1歩である.そもそも,接錘が一意的かというのが基本的であるが,一般の Riemann 多様体の場合,Ricci 曲率が下から有界な列の極限空間は接錘が一意的でないことが Colding-Naber によって例をもって示されている.Riemann多様体 S が佐々木多様体とは,S の錐 C(S) がケーラー・アインシュタイン多様体の時をいう.Sがトーリックとは,C(S)が通常の複素幾何の意味でトーリックのときをいう.従って S の次元が 2n-1 のとき,n 次元トーラスが C(S) に双正則かつ等長的に作用する.これまでの小野肇,Guofang Wang との共同研究で高さ一定のトーリック・ダイアグラムから作られる佐々木多様体は佐々木・アインシュタイン計量を持つことを証明したが,このことからトーリック佐々木・アインシュタイン多様体はトーリック・ダイアグラムという組み合わせ的データと同一視される.佐々木・Einstein 多様体に対する知見をケーラー多様体の列のGromov-Hausdorff 極限の幾何に適用することを試みた. Chi Li, 藤田健人らの研究もこのような観点から再検討されるべきである.
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