研究課題/領域番号 |
26610014
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
志賀 啓成 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (10154189)
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研究分担者 |
藤川 英華 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80433788)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 関数論 / トポロジー / Hyperbolic geometry / Teichmuller space / Riemann surface / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 多国籍 |
研究実績の概要 |
志賀は、一般のRiemann面上の種々の調和関数の空間から定義される不変距離について考察し,その値の評価及び完備性について,Riemann面のポテンシャル論的性質から考察した.また,無限型Riemann面の変形を用いて,Sullivan-Thurstonによる擬等角運動についての定理の反例を構成した. 藤川は、以前の論文(E. Fujikawa, Michigan Math. J. 54 (2006), 269-282)で証明した双曲リーマン面の漸近的等角写像による閉測地線の長さの変化に関するSolvari-Wolpert 型定理を用いて,漸近的 length spectrum タイヒミュラー空間についての基本的性質を考察した.上記の定理があれば,通常の length spectrum タイヒミュラー空間に関する問題の多くが,ほぼそのまま漸近的な枠組みにも適用可能である見通しができた.詳細については次年度以降に論文としてまとめる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究分担者の藤川氏が産休という状況になったが,研究自体の進捗状況はおおむね順調である. 理由の一つは,開Riemann面における,調和関数を用いた種々の擬距離についての結果が得られたことである.これらの擬距離は等角不変量であるので,Riemann面の変形空間の中で果たす役割は大きいと思われる.論文は日本数学会のジャーナルに受理され,出版予定である. もう一つの理由は無限型Riemann面の変形を用いて,Sullivan-Thurstonによる擬等角運動についての定理の反例を構成したことである.これはSullivan-Thurstonの論文の中で曖昧な照明で述べられていたことが間違いであったことを示す反例で,その構成には研究代表者の無限型リーマン面の変形についてのテクニックが使われている.これは投稿準備中である. さらに,Papadpoulos氏と議論して明らかになったこととして,漸近タイヒミュラー空間におけるlength spectrum metricについての研究が進んだことがある. 以上のような進展状況から,概ね順調といえる.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に構成したSullivan-Thurstonによる擬等角運動についての定理の反例に着目する.この例は,無限型リーマン面と捉えることができる.今後はこの例が,無限型リーマン面の変形という立場から見た意味づけを考察する.さらにこのような例が生じないようなリーマン面,すなわちSullivan-Thurstonの結果が成立するようなリーマン面の条件について考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
Papadpoulos氏が日本数学会の招きで来日した際の議論結果が予想よりも順調で,新たに打ち合わせの必要がなくなったことによる,旅費の縮小.
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次年度使用額の使用計画 |
今後の推進方策であげたSullivan-Thurstonによる擬等角運動は, ニューヨーク市立大学の研究者たちとの共同研究であった.27年度も彼らとの共同研究を推進するための海外旅費として使用する.また,国内外の関連分野の研究集会にも参加して研究成果を発表するとともに,関連研究の情報収集に努める.
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