研究課題/領域番号 |
26610014
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
志賀 啓成 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (10154189)
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研究分担者 |
藤川 英華 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80433788)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 関数論 / トポロジー / Hyperbolic geometry / Teichmuller space / Riemann surface |
研究実績の概要 |
1980年代,SullivanとThurstonは正則運動の一般化として複素平面内の集合に対し擬等角運動という概念を確立し,パラメーター空間が一次元の場合に擬等角運動の拡張定理を主張した.しかし,研究代表者等は彼らの定理の主張は正しくなく,反例が存在することを示した. さらに,この擬等角運動の反例に着目し,この例を無限型リーマン面の変形という立場から研究を進めた.その結果として, tame qc-motionという新しい概念を創出し,これに関してパラメーター空間が高次元単連結多様体の場合に拡張定理を証明した. この応用として,Klein群の変形の擬等角不変性について新たな知見を得た.これは無限型リーマン面を表現するKlein群の運動にも適用可能で,従来にない新しい結果である. また,Riemann面上の種々の等角不変計量についての研究,特にポアンカレ計量との比較を行い,様々な不等式を導き,その等号成立条件について考察した.なかんずくハルナック距離についてはマルティンコンパクト化の観点から研究し,その完備性について新たな結果を得た.また,Klein群の変形空間について,その複素解析的性質を明らかにた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初,「研究の方策」としてあげた問題がほぼ達成された.すなわちSullivan-Thurstonによる擬等角運動についての定理の反例に着目し,この例を無限型リーマン面の変形という立場から研究を進めた.その結果として,tame qc-motionという新しい概念を創出し,これに関して幾つかの知見を得た.さらにすなわちSullivan-Thurstonの結果が成立するような条件について一定の成果を得た.これらの研究成果はニューヨークの共同研究者らと論文にまとめて現在投稿中である.従って,研究の達成度は概ね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
Sullivan-Thurstonによる擬等角運動についての定理の反例に着目して得た新しい概念tame qc-motionは正則運動(holomorphic motion)を含む一般的な概念である.q-motionに対して得られた結果を正則運動に適用し,更に精密な結果を得ることを目指す.これは換言すれば種数0のRiemann面の正則族の研究になる.これまでに行った考察では,パラメータ空間が単連結でない場合はRiemann面の変形空間のモノドロミーが深く関っていることがわかっている.よって無限型Riemann面の写像類群に対して新しい知見を得ることが期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が主催する研究集会が東京工業大学で開催されたため,予定していた出張費を使用しなくて済んだことによる.
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次年度使用額の使用計画 |
ポーランド, Chelm,THE STATE SCHOOL OF HIGHER EDUCATION IN CHELMにて開催される研究集会「XVIII-th Conference on Analytic Functions and Related Topics」に参加し,最近の研究成果を講演し,関連分野の研究者と討論・情報交換を行う.また,年度末には研究集会を催し,研究成果の発表と総括を行いたい.
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