研究課題/領域番号 |
26610015
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 亮一 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (20162034)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 定スカラー曲率ケーラー計量 / 修正ケーラーリッチ流 / 離散化 / 修正リッチイテレーション / モンジュアンペール方程式 / 代数的極小曲面のガウス写像 / 放物型変換による集中現象 / 周期条件と対数微分の補題 |
研究実績の概要 |
1. 定scalar曲率Kaehler計量の方程式は Monge-Ampere 方程式ではないが,Monge-Ampere energy functional の臨界点であることことから Monge-Ampere 方程式への帰着が何らかの意味で可能なのではないかと思われる. 一般の偏極におけるKaehler 計量の空間 H の力学系で modified Kaehler-Ricci flow (Kaehler-Ricci flow の右辺を -Ric(ω)+HRic(ω) に変えた発展方程式,ここで H は調和部分をとることを意味する)を離散化するものを次のように導入した:Ric(ω)+ddc u の ω に関するトレースが一定になるような関数 u をとり(これは線形方程式を解くだけ),次に未知関数 φ に対する Ricci(ω(φ)) =Ric(ω)+ddc u というモンジュアンペール方程式を解く.すると ω→ ω(φ) で定まる H の力学系は modified Kaehler-Ricci flow を離散化するものである. 今後,この力学系にそってK-energyがどのように振る舞うかを調べる.初期計量 ω を出発する力学系が繰り返し数無限大の極限で(問題の偏極が定scalar曲率Kaehler計量を許容するとき)定scalar曲率Kaehler計量に収束するかどうかを考える.この問題は Berman のthermodynamical formalism for KE metrics を偏極一般に拡張する試みである. 2. 代数的極小曲面のガウス写像の値分布に関する Osserman 理論の計量化理論を構築する試みが最終段階を迎えている.放物型変換が惹き起こす局所化現象を発見し,そのネヴァンリンナ理論による記述を与えた.周期条件をencodeするネヴァンリンナ理論的関数を構成し,そこから情報を引き出す対数微分の補題を定式化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定スカラー曲率ケーラー計量の存在問題,ケーラーリッチソリトンの偏極一般化問題,修正ケーラーリッチ流の研究においてモンジュアンペール方程式への帰着は方程式の形だけ見ていては不可能である.ところが,私が導入した修正リッチイテレーションというケーラー計量の空間の力学系は修正ケーラーリッチ流を離散化したものであり,この力学系は線形方程式とモンジュアンペール方程式の組み合わせを一つの単位とする繰り返しの形になっている.この力学系を通して偏極一般化した修正ケーラーリッチ流とモンジュアンペール方程式の関係が明らかになった.これは理論上の大きな進展である.
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今後の研究の推進方策 |
アファイン代数多様体上のスカラー曲率ゼロの完備ケーラー計量の存在と無限園因子のスカラー曲率一定ケーラー計量存在の関係を明らかにする.無限園因子がケーラーリッチソリトンを許容するときのアファイン代数多様体に入る特殊ケーラー構造を決定する.修正リッチイテレーションにそって K energy がどのようにふるまうかを研究する.Berman の KE 計量に対する熱力学形式を修正リッチイテレーションにも適用できるように修正して偏極一般化した場合の定スカラー曲率ケーラー計量の変分法理論を確立する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に海外での研究会のオーガナイザになっている.日本側参加者の旅費の補助が必要になるために不足が予想される金額を次年度使用とした.
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次年度使用額の使用計画 |
9月にマドリードで行われる (私は日本側オーガナイザ)GeoQuany2015 への日本側参加者の渡航費補助にあてる.
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