研究課題/領域番号 |
26610016
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小磯 深幸 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (10178189)
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研究分担者 |
本多 正平 東北大学, 理学研究科, 准教授 (60574738)
本田 淳史 都城工業高等専門学校, 一般科目理科, 講師 (90708611)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 平均曲率 / 非等方的曲面エネルギー / 測度距離空間 / 曲面の特異点 / 変分問題 / ウルフ図形 |
研究実績の概要 |
単結晶の基本的な数理モデルとして知られるウルフ図形と呼ばれる凸図形は,同じ体積を囲む閉曲面の中での非等方的エネルギー(詳細は後述)の最小解である.より一般に,結晶やある種の液晶のように異方性を持つ物質の形状は,その表面の各点の向きに依存して決まるエネルギーが,同じ体積を囲む図形の中で極小値をとる形と考えられる.このような表面の数学的抽象化は,「囲む体積を変えない」変分に対する非等方的エネルギーの平衡曲面である.ここで,曲面の非等方的エネルギーとは,曲面の各点の向きに依存して決まる非等方的表面エネルギー密度関数の曲面全体での和(積分)である.このような平衡曲面は,非等方的表面エネルギー密度関数が「凸性条件」を満たす場合は滑らかな曲面となり幾何学的あるいは解析的な研究が進んでいるが,「凸性条件」を満たさない場合は平衡曲面として特異点を有するものが現れ微分幾何的な研究はまだほとんど進展していない.本研究では,まず,平衡曲面(より一般に,一般次元ユークリッド空間内の平衡超曲面)が満たすべき必要十分条件を求めた.これは,滑らかな点における曲率と,滑らかでない点における特異性の性質を用いて表現される.さらに,非等方的表面エネルギー密度関数が二階連続的微分可能である場合に,2次元ユークリッド空間内の曲線について,非等方的エネルギーの極小値を与える平衡閉曲線がウルフ図形に限ることを証明した.(以上は小磯深幸を中心とする研究である.) 本多正平は,リッチ曲率が下から押さえられるリーマン多様体の族の極限として得られる測度距離空間(特異点を持つ曲面の一般化と見なせる)に対する基本概念と基本理論の構築を進めた.たとえば,このような空間に対する向き付けの概念を初めて定義し,その安定性を証明した. 本田淳史は,曲面の特異点の微分幾何学的研究を進め,その等長類の決定に係るいくつかの重要な結果を得た.
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