研究課題/領域番号 |
26610021
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉本 充 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (60196756)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | モジュレーション空間 / 相空間解析 / 正準変換 / 分散型方程式 / 非線形問題 |
研究実績の概要 |
偏微分方程式論の研究において、相空間上で議論を展開することにより解の性質に関する情報を引き出す方法論(相空間解析)は、解析力学の登場以来古くから用いられている手法のひとつである。この研究は、特に解の定量的な情報を相空間解析により導き出すための、モジュレーション空間を用いた新しい包括的方法論を構築することを目指すものである。さらに、この方法論を非線形問題などの偏微分方程式の諸問題に応用し、「比較原理」「フロー法」などの評価式導出の際の新しいアイデアも取り込みながら、変数係数の場合など方程式の一般化へのブレークスルーの可能性をも探るものである。 今年度は、まずは基本的な土台となるモジュレーション空間論のさらなる整備につとめた。具体的には、モジュレーション空間と類似の方法で定義される Wiener-amalgam 空間とソボレフ空間との包含関係を解明した。モジュレーション空間とソボレフ空間との包含関係は既に知られており、これとほぼ同様の結果が得られるものと考えて研究を進めていたが、Wiener-amalgam 空間固有の何らかの性質が反映するためか、全く予想外の結果に到達したことは少なからず驚きであった。この特殊な性質を偏微分方程式の問題にも反映させることにより、新たな展開が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の具体的なプランの中核として、モジュレーション空間を相空間解析の道具として用いるための理論整備を基本課題に据え、さらには応用課題としてその成果を非線形問題などに応用していくこと予定していた。基本課題に関する成果として最大のものは、モジュレーション空間と類似の空間であるはずの Wiener-amalgam 空間が、実は独自の性質をもっているという事実の発見であろう。これにより応用課題も軌道修正に迫られるなど予想外の展開となっているが、総じて研究が順調に進行しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
モジュレーション空間あるいは Wiener-amalgam 空間に関する基本課題として、「正準変換や非線形作用が閉じているか?」という問題が大きな未解決問題として残されており、まずはこれらの解決への糸口を丹念に探っていきたい。最近、インドの若手研究者によってこの問題に関する一部進展が報告されており、まずはその手法を検討するところから始める予定である。なお、これらの問題を解決することにより、特異な初期値空間における適切性など非線形方程式の諸問題への応用が大きく広がることが分っており、その方面での研究をぜひとも推進させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた学会出張のための国内旅費が今年度残額を超過してしまう事が判明し、当該経費の使用をとりやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度開催される研究集会に参加するための国内旅費として使用する。
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