本研究は不変式論的観点から「無限大」の消去のメカニズムを探ることを目的としている.実際に,QED などの本格的な無限大を扱うことは,原段階では極めて困難であることは,当然わかっているので,その雛形とも看做される空間1次元の場合を考えると,例えば「函数体」における「留数」という不変量が調べるべき対象となる.これは一般座標変換の群という,非常に大きな(無限次元)群で不変になっている.函数論では積分によって留数自体は容易に捉えれるが,一般の代数体など(基礎体が任意)だと,その代数的な扱いに,無限の消去という技法が入ってくる.John Tate や岩沢健吉がその処方を与えているが,1次元的に並んだ無限次元の半分程度の無限次元空間を基準にしたトレースの利用である.これと似ているが,それ自体がどれくらい認識されているか判らないことに,1次元場の理論における「真空偏極」が,無限次元リー環の中心拡大を生むことがある.さらに,これは,表現論としても重要な spin および oscillator 表現の構成にも関係する.たとえば,oscillator 表現とそのdual をテンソルして,自然表現の上の函数感の変換群として実現をする際にも,基準の「真空」にあたるベクトルは,半分無限次元部分空間に住むものである.本研究では,これらの関係をより明確にするにあたって,とくに群作用で不変なベクトルものの特定としての「不変式論」的観点を積極的に活用するという方法を提起したいと考えた.Capelli 恒等式のあたらな発展もその中にある. 一般座標変換の群に関しては,古典的な Faa di Bruno の公式について,組合せ的観点と無限変数の微分作用素を用いた証明によって,Bell 多項式や Lambert の函数に関する新たな知見への手がかりとなった.これについては,別途,研究を進める計画にある.
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