研究課題/領域番号 |
26610030
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
高橋 太 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10374901)
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研究分担者 |
和田出 秀光 金沢大学, 理工学域機械工学類, 准教授 (00466525)
石渡 通徳 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (30350458)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 関数不等式 / 変分原理 / ハーディー不等式 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、Lorentz 空間や Orlicz 空間など、実解析学に現れる様々な関数空間において新規に発見されつつある(絶対的)関数不等式に対し、その成立の背後にある未知の変分構造を捉え、新しく変分原理として整備・確立し、変分原理の視点から当該の関数不等式を統一的に理解し、偏微分方程式(系)への応用を探ることである。 さらに L^1 空間などの非回帰的空間で機能する新規変分原理の確立とその偏微分方程式(系)への応用も目指している。本研究課題の具体的な研究内容は以下の通りである。 1.不定符号変分構造を持つ楕円型方程式系への Sobolev-Orlicz 空間を用いたアプローチ 2.種々の関数空間における Trudinger-Moser 型不等式に付随する変分構造の解明 3.スケール不変なハーディー型不等式とその応用、特に解の安定性理論との関係の解明 本年度は、臨界型と呼ばれるハーディー不等式の研究に着手し、特に「シャープバージョン」と呼ばれる臨界型ハーディー不等式の、部分積分だけを用いる簡明な導出方法を見出した。この結果は既に論文として発表済みである。また、複数特異点型ハーディー不等式の研究も開始し、関連する偏微分方程式の可解性の研究を推進した。本年度には4編の原著論文を発表し、日本数学会一般講演3回、海外での招待講演を含む計16回の研究講演、及びスペインで開催された大規模国際研究集会 10th AIMS での Special Session の組織などの研究交流活動を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、楕円型方程式の解の「安定性不等式」に密接に関連するハーディー型不等式の研究を推進したが、特に可積分性の観点から臨界的なソボレフ空間における対数補正項付きハーディー不等式について、最良定数の決定とその達成不可能性、及び関連する準線形楕円型偏微分方程式の可解性について、修士学生と共同で進展を得ることができた。この結果は現在論文にまとめられ、専門誌に投稿中である。さらに「シャープバージョン」と呼ばれる、ある種の非線形スケール変換に関してのスケール不変性を持つ臨界型ハーディー不等式についても、領域がボールの場合の最良定数の達成不可能性を、具体的な剰余項を見出すことで証明することができた。その証明の際に用いられた、ボールでの臨界型ハーディー不等式の「ハーディー差」と、全空間、劣臨界ハーディー不等式のハーディー差を結びつける変換は、今後、不等式成立の背後にある変分構造・スケール不変構造を研究する際に鍵となるものと思われる。これらの一連の結果のほかに、複数特異点型ハーディー不等式の研究も進め、特異性ポテンシャルが「積型」の場合には、最良定数の値が領域によって変化し、特別な領域上では、最良定数が全空間での最良定数と異なり、ある関数によって達成される、という肯定的結果を得ている。それぞれの重み函数の特異性が臨界の場合にも、最良定数の達成可能性を予想しているが、残念ながらその成否は未知のままである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究成果の上がり始めたハーディー型不等式と関連する偏微分方程式の可解性の研究に注力して研究を推進するのが得策であろう。 先行する海外研究者・国内研究者を高橋が主催する「南大阪応用数学セミナー」に招聘し、議論を行う。また研究代表者・分担者は積極的に海外研究機関を訪問し、国際研究集会参加による研究情報収集、研究分担者・連携研究者との緊密な研究連絡を主たる研究方法としながら、研究を推進していく。特に本年度は、イタリアで開催される 4th Italian-Japanese Workshop に参加し、当該分野の研究の盛んなイタリアの専門家からの意見を聞きつつ、研究情報の収集に努める。併せて、Sobolev-Orlicz 空間、Lorentz 空間を基礎空間に取る新たな変分原理の構築を行う。また種々の関数空間における Trudinger-Moser 型不等式を考察し、付随する変分構造の解明を行う。さらに、スケール不変なハーディー型不等式の変分法的観点からの研究を行い、解の安定性理論との関係を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度7月にマドリッドで行われた大規模国際研究集会 10th AIMS での Special Session を研究分担者の石渡・和田出両氏と組織したが、その際に招聘した外国人研究者の招聘旅費として計上していた分が、招聘研究者がホテルを相部屋にしてくれたり、経済的な経路を利用してくれたりしたため、45万円ほど残額を生じた。また、当初、高橋が主催する「南大阪応用数学セミナー」へ招聘を予定していた外国研究者が招聘できなかったことでも予算に残額を生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の残額分は、次年度に高橋、石渡、和田出がミラノ大学、フィレンツェ大学を訪問する際の海外出張旅費、および中国、台湾からの研究者招聘旅費として使用する計画である。また、高橋、石渡が2015年12月に研究組織に加わる 3rd Chile-Japan Workshop への研究者招聘や関連する出張旅費として使用する。
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備考 |
プレプリントは以下の URL から入手可能。 http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/math/OCAMI/preprint/index.html
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