研究実績の概要 |
有限体を活用した高精度特に有理数上の数値解析手法を与え, 実装および有効性を下記の場合に示した. 1. 多変数超幾何多項式の値の計算にパラメータについての差分方程式(漸化式)を用いると, double 型の範囲では, 誤差の蓄積が大きく真の値からおおきくずれる現象が見られる. これを回避するためには, すべてを有理数による正確計算で遂行すればよいが, この場合にはいわゆる bignum による速度低下が起きる. 計算代数での標準的手法(modular method) である, mod 計算, 中国剰余定理, 分散計算をこの場合に適用することにより, 高速に有理数上の正確計算が遂行可能であることを示した(橘, 後藤との共同研究). 実装は Risa/Asir のパッケージ gtt_ekn として公開もしている. 多変数超幾何多項式の値評価は分割表の条件付き推定への応用がある. 2.常微分方程式の数値解析を有理数上で行う手法を与えた. 有理数での計算により, 誤差解析が数学的に明快になる他, 高精度計算が可能となる. Stoer-Bulirsch アルゴリズムを用いた常微分方程式の補間型数値解法と上記のmodular method を組み合わせることにより, ある程度高速な有理数上の常微分方程式の数値解析アルゴリズムを与えることに成功した. 実装は Risa/Asir のパッケージ tk_bs として公開もしている. non-central wishart 分布の累積密度関数の数値計算(これには悪条件の行列式の計算が出てくるため, 桁落ちを防ぐには高精度計算が必要)への応用の研究が進展中(Danufane, 小原との共同研究).
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