研究課題/領域番号 |
26610041
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉田 寛 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (60401262)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 多細胞 / 多変数多項式 / 動的恒常維持 / 単項簡約 / 多項式生命 |
研究実績の概要 |
多細胞生物では、代謝活動によって排泄や皮膚の剥離を行なっており、いわば、一部が常に崩壊しているが、常に新しい細胞が補われており、組織の構造は再生・維持されている(動的恒常維持)。しかし、その原理や限界は厳密には理解されていない。そこで、本研究では、多細胞集団を多変数多項式で表現し、細胞の状態更新・増殖・崩壊を単項簡約等の多項式に対する操作で表現することによって、動的恒常維持機構の原理と限界に迫る。多項式系でモデルを構築することにより、代数的な手法を用いることが可能となる。このような数学的にも興味深い機構の数理を確立する。 平成26年度においては、以下の2つについて実施した。(1)多変数多項式モデルの構築:一部分が崩壊しながらも全体として構造を再生・維持できる(動的恒常維持)機構を探究するために、二次元状上に並べた細胞集団を数理モデル化した。個々の細胞状態と位置を単項式で表現して、細胞集団を一つの多項式として表現した。(2)多項式への操作(単項簡約等)の設計:過去に行った1次元鎖状の細胞鎖モデル(H. Yoshida et al. AAECC 2011)を拡張しながら、具体的な多項式と単項簡約の設計を行った。ここでは、細胞塊の削除ルールには単項式を当て嵌めた。 具体的な多細胞集団のモデルとして網膜細胞を選んだ。一つの単項式から出発して、単項簡約を繰り返すことによって、単純化した網膜細胞のパターンを再現することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的な多細胞集団のモデルとして網膜細胞を選び、一つの単項式から出発して、単項簡約を繰り返すことによって、単純化した網膜細胞のパターンを再現することに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に設計した多項式と単項簡約に基づいて、様々な項順序や周囲からの崩壊の様式を試みて、崩壊しながらも2次元の細胞状態のパターンが再生・維持できる発展規則を列挙した後、分類する。更に、この結果を用いて、任意の動的恒常パターンが設計可能かどうかを探究する。
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