本研究の目的は、赤外線星団の座標と星数を記録した全天カタログを作成することである。本研究では、当初、赤外線星のデータベースである2Micron All Sky Survey Point Source Catalog (2MASS PSC)に記録されている星の座標をもとに星数密度(単位立体角当たりの星の数)の全天分布図を作成し、周囲より一段と密度の高い部分を探査することにより星団の検出を試みた。これは、星団の検出によく使われている一般的な方法である。しかし、実際に全天分布図を作成してみると、星団は銀河面から少し離れた領域に多く見られ、より多くの星団の検出が期待される銀河面にはわずかな数の星団しか発見できなかった。その原因を調査したところ、銀河面では背景の星数密度が高く、多数の赤外線星団がノイズに埋もれ検出から漏れてしまうことがわかった。研究期間の途中(平成27年度後半ごろ)から、この問題を解決するために、銀河面のバックグラウンドを下げる(クラスタ以外の星を除外する)ための方法を模索した。試行錯誤の結果、若い星団のメンバー星には星の色―色図(Color-Color Diagram、CCD図)と色―等級図(Color-Magnitude Diagram、CMD図)上での分布に特徴があり、この特徴を利用して2MASS PSCから赤外線星団のメンバー候補のみを選択的にピックアップして星数密度分布図を作成しクラスタ探査をやり直す、という方法が有効であることがわかった。平成28年度中にCCD図とCMD図上での星の選択を行い、星数密度の全天分布図を作り直したが、従来の単純な星数分布図では問題にならなかった2MASS PSCのスキャン毎の感度ムラが顕著に現れやすいという新たな問題が発生した。現在もこの問題の解決に挑戦しているが、全面的に解決するにはもう少し時間がかかる。
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