研究課題/領域番号 |
26610048
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高橋 慶太郎 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80547547)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宇宙磁場 / 電波天文学 / 偏波 / トモグラフィ |
研究実績の概要 |
広帯域の偏波観測が可能な電波望遠鏡のためのソフトウェア開発を行った。特に、ファラデートモグラフィと呼ばれる手法によって視線方向の磁場、熱的電子密度、宇宙線電子密度の構造を再構成するアルゴリズムの開発を行った。そして次世代電波望遠鏡Square Kilometre Arrayの試験機であるASKAPのデータ解析パイプラインに組み込んだ。 具体的なアルゴリズムには2種類があり、1つは電波天文学の像合成に用いられるCLEANアルゴリズムを応用したもの、もう1つはマルコフ連鎖モンテカルロ法によってパラメータ推定を行うものである。これら2つのアルゴリズムにはそれぞれ長所・短所があると予想されるため、実際の観測データに適用した時にどの程度精密な再構成を行うことができるかをシミュレーションによる模擬データによって調べた。 CLEANアルゴリズムにおいては2つの偏波源がファラデー深度空間において、望遠鏡の観測帯域から決まるファラデー深度幅よりも接近している場合に偽のシグナルが現れることがわかった。この偽のシグナルが現れる条件をファラデー深度空間での距離と2つの偏波源の偏波角の相対的な差に関して系統的に調べた。 マルコフ連鎖モンテカルロ法においては、あらかじめ偏波強度分布についてのモデルが必要であり、真の分布が仮定したモデルに近いならばパラメータ推定は効率的かつ正確に行えることがわかった。また、実際の銀河がファラデー深度空間においてどのような偏波強度分布をしているのか、銀河の数値シミュレーションデータを用いて計算した。その結果、これまでよく仮定されてきたようなデルタ関数、トップハット、正規関数など、単純な関数ではとても表せないような複雑な分布をすることがわかり、また銀河ガスの乱流のランダム性も分布に大きく影響することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファラデートモグラフィのソフトウェア開発において、マルコフ連鎖モンテカルロ法を応用したアルゴリズムを実際に開発し、オーストラリアの電波望遠鏡ASKAPの偏波サーベイ計画POSSUMのデータ解析パイプラインに実装することができた。また、このソフトウェアの性能評価を行って国際会議の場で発表し、良い評価を得ることができた。したがっておおむね研究計画に沿って研究が進行したと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたファラデートモグラフィソフトウェアは完成したが、マルコフ連鎖モンテカルロ法にはより先進的なアルゴリズムが開発されている。例えばレプリカ交換法を用いると、パラメータサーチをするときに尤度の極小値にとらわれることなくパラメータ空間の広い領域を探査し、最適なパラメータを効率よく見つけ出すことができるとされている。今後はこのレプリカ交換法をファラデートモグラフィに適用してより効率的で効果的なソフトウェアを開発する。 しかし、依然として偏波強度分布に関するモデルが必要であるため、モデルを必要としない手法の開発も必要になってくる。その有力な候補としてスパースモデリングがあり、ファラデートモグラフィへの応用を目指す。 また、ASKAPの科学観測はすでに始まっており、観測データが得られつつある。偏波観測データが得られ次第、実装したソフトウェアを適用して銀河磁場の探索や銀河間磁場の発見を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機の購入を見送ったため、物品費に余剰金が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
計算機の購入と大学院生をオーストラリアに派遣する旅費として使用する予定である。
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