研究実績の概要 |
ブラックホール(BH)の直接検出方法の考案が本研究課題の目的である。H26,27年度において、検出方法の原理はまとめた。まず、一般相対性理論に基づいて、BHの直接検出とは「BHの質量Mと自転角運動量Jを、一般相対論的な現象の特設観測で測ること」と定義する。そして M,J を測る原理の概要は、以下の通りである: (1) BH周辺は観測波長で見る限りクリアだとし、BH近傍で(BHより十分小さな)光源がバースト的・等方的に発光した現象を観測ターゲットにする。 (2) 光源から観測者まで最短距離を通る光線 W0 と、BH周囲を1巡してから観測者に届く光線 W1 を観測し、次の2つを測定する:Dt = [W1の検出時刻]-[W0の検出時刻](= 光線の観測者への到達時間の差)、R = [W1の観測強度]/[W0の観測強度] (3) 上記の観測量はBHパラメータ M,J と光源の位置xや速度vによって決まるので、どんな M,J,x,v の値に対してどんな Dt,R の値が得られるのかを理論的に計算してリスト化する。 (4) 同一のBH候補天体で何度も(様々な光源の位置と速度の場合で)Dt,R を測定し、上記(3)のリストを比較することで、観測対象のBHの M,J が得られる。 以上のアイデアに基づく理論研究の成果は、2016年4月4日現在(本概要の執筆時)、論文としてまとめている最中である。さらに現在、天文観測の専門家と、実際に Dt,R をどのように測定するかという観測手法について議論しているところである。今後、本研究で提案する検出原理を論文にまとめると同時に、この原理に基づいたBH直接検出を実行する観測計画の立案を目指していく。
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