エネルギー10の16乗を越える超高エネルギー領域の宇宙線がどのような原子核であるのかを調べるため、新しい宇宙線測定手法の研究を行った。宇宙線は大気と衝突し2次粒子群である空気シャワーを発生させる、更に地上まで到達した粒子群が水中に入射すると急速にエネルギーを失い音波を発生させると考えられる。この音波強度はどの程度であるか、また音波測定からエネルギー分布を計測し核種弁別等が可能であるかどうかを実験とシミュレーション計算から調査した。 本年度は、エネルギー10の16乗、10の17乗電子ボルトの陽子と鉄原子核1次宇宙線空気シャワーが標高4000m程度の高所に位置する湖に到達した際の2次粒子の特徴とそれにより発生する音波強度と波形形状を数値計算から求めた。このため、空気シャワーモンテカルロシミュレーションコード”COSMOS”と物質中の粒子相互作用計算コード”EPICS”を用いた。 はじめに、生成した空気シャワーの二次粒子の水中でのエネルギー損失を計算し、そこから陽子と鉄によるエネルギー損失の集中度、分布の拡がりを調べ、観測や粒子判別可能であるか調査した。その結果、高エネルギーの二次粒子は、空気シャワーのコア領域の周囲に集中し、10の17乗電子ボルトの陽子空気シャワーでは中心の半径10m以内に24×10の15乗電子ボルト以上のエネルギー束がありまた鉄との差は約2倍であることがわかった。先行研究の結果ら、このエネルギー損失によって発生する音波は市販のソナーによって十分測定可能であることが示唆される。また、実験的に現象を検証するため水へのレーザー照射によって発生する音波を用いた測定方の研究も行った。26年度での検証実験では感度-211dB re 1V/μPaのソナーを使用し、音波測定が可能であることを確認したが、本年度は更に40デシベル以上感度のよいソナーを準備し、より高精度での実験を進めた。
|