コンプトンカメラはγ線の入射方向を検出する測定器で,入射γ線のコンプトン散乱検出部と散乱γ線検出部からなる。コンプトン散乱部の読み出しは従来電気的に行っているが,それをガス増幅による光を読み出すことにより,散乱γ線検出部の読み出しと共通化し,その結果より簡素化された検出器の研究開発の目的としている。 コンプトン散乱検出部の開発では,100μm厚と400μm厚の2枚のガス電子増幅器(GEM)を用い,アルゴンとメタン(混合比9:1)の混合ガスに5.9keVのX線を入射した場合のガス増幅からの蛍光を測定した。真空紫外の蛍光を可視光へ波長変換するためのプラスチックシンチレータを網状の陽極面を挟んで400μM厚のGEMと対置し,シンチレータに接合した光電子増倍管(PMT)で光信号を読み出した。ガス増幅によりGEM及び陽極面での誘起電荷による信号と光読み出し信号を同時計数することで,ガス増幅からの蛍光であることを確実なものとした。GEMでのガス増幅率を変えながら,光信号から求めた平均光量を測定した結果,正の相関が見られ,ガス増幅による蛍光の測定を確認した。しかし,絶対光量が少なく,コンプトン散乱位置の測定精度には不十分であった。これは,ガスによる光の吸収が影響していると考えられ,今後の展開としては,アルゴンと四フッ化炭素の混合ガスに変えることでガス中で波長変換し減衰を抑え,光検出器をPMTから小型半導体光検出器(MPPC)に変更しシンチレータの設置場所をよりGEMに近づけることで集光効率を上げる。 散乱γ線の検出部については,1つのCe:GAGGシンチレータ(6mm×6mm×10mm)と3mm×3mmの受光面を持つMPPCが2×2のマトリクス状に並んだMPPCアレイを接合し,γ線の入射位置の測定を行った。位置分解能はシンチレータの大きさが支配的であることが分かったため,形状を3mm×3mm×10mmとし,MPPC一つに一つのシンチレータを接合することを考えている。
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