研究課題/領域番号 |
26610069
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
越智 敦彦 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40335419)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 素粒子実験 / 粒子測定技術 / MPGD / ガス放射線検出器 / リソグラフィー / スパッタリング |
研究実績の概要 |
本研究課題では、100μmオーダーの電極ピッチを持つ超微細電極型マイクロパターンガス検出器(MPGD)を開発し、加速器実験の粒子線測定、X線構造解析や医療診断装置に求められるイメージング能力、及びγ線コンプトンカメラや暗黒物質探索に必要な飛跡検出能力を大幅に向上させる、全く新しいデバイスとして提案する。ガス検出器の電極間隔縮小は一般に放電確率の上昇を招くが、本研究では炭素スパッタによる薄膜技術で高精細かつ高抵抗の電極を構成するアイディアにより、この問題を回避する。なお、本研究期間では、超微細電極型MPGDの原理検証までを目標とする。 本年度は研究二年目にあたり、初年度の成果をもとに、μ-PIC型のMPGDを、炭素スパッタによる薄膜技術を用いることで試作した。初年度の研究で問題となった、フレキシブル積層基板技術による電極作成時のアライメント問題を解決するため、本年度では一度電極ピッチを、従来型と同じ400μmに戻したうえで、積層基板素材としてドライレジストフィルを用いるなどの新たな素材・方法を試した。これは、既作成層へ新たな露光処理を重ねる際に視認性を良くし、アライメントの微調整を可能とするためのものである。 本年度は、このための試みをいくつか行ったが、当初はドライレジスト上の微細なエッチング条件導出の難しさなどから、なかなか動作させられる検出器サンプルを作成することができなかった。本年度終盤になり、ようやく技術的問題に目途がついたが、試作及び試験に必要な期間の問題などから、当初本年で終了する予定だった本課題研究の研究期間を一年延長することにより対応することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、工業的に一般的な技術であるリソグラフィ技術をベースとした、微細加工技術を用いて検出器の電極構造を作成するものである。これまで、新しい素材の検討やプロセス手法の改良を企業と協力して行うことにより、微細な検出器構造を実現してきた。しかし本研究課題実現のためには、一般的な工業的プロセスの限界を超えた微細な加工について、手探りの状態で最適な手法を求める必要があり、今年度の研究では、多くの時間をその検討に費やした。現在、ようやく有望と思われる手法の目途がついたものの、当初想定した研究ペースに比べればある程度時間がかかっていると言わざるを得ず、研究期間の延長も必要としたことから、現在までの進捗状況については、「やや遅れている」と判断するものである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、研究期間延長にあたる年度であるが、27年度の後期までに、これまで問題となっていた積層基板の微細加工のブレークスルーとなり得る新たな手法が見つかったことから、この手法による検出器の試作を行う。その上で、製作上の精度の評価、検出器としての動作の評価、及び検出器としての性能の評価を行い、本研究が目的とする超微細型検出器の原理検証までを実現する。 また、この原理検証をもとにして、次世代の加速器実験や高精度の画像検出を必要とする放射線イメージングなどの分野で用いることのできる、より実用的な検出器開発を広く提案する。またこの結果については、論文発表の他、RD51などの国際共同研究を通じて国際的に発信していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題実現のためには、一般的な工業的プロセスの限界を超えた微細な加工について、手探りの状態で最適な手法を求める必要があり、今年度の研究では、多くの時間をその検討に費やした。現在、ようやく有望と思われる手法の目途がついたものの、当初想定した研究ペースに比べればある程度時間がかかっていると言わざるを得ず、研究期間を延長し、試作のための費用を平成28年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、炭素スパッタ技術について数回テストを行った後、これまでの製造上の問題点を克服したうえでの2次元のμ-PIC試作に取り組む。次年度使用額はこの試作に大部分(約120万円程度)を用いる予定である。また、この検出器の基本的な動作試験を、RI及び加速器による中性子などにより行うことにより、評価を行うが、この試験のためにも 25万円程度の予算を割く予定である。
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