研究課題/領域番号 |
26610071
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
志垣 賢太 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70354743)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高強度磁場 / 高エネルギー原子核衝突 / 仮想光子 / 偏光 |
研究実績の概要 |
強い相互作用における CP 非保存の議論も含めて注目される、高エネルギー原子核の偏芯衝突における宇宙最高強度磁場の生成に対して、直接生成仮想光子に着目した複数の測定量を提案し、世界初の直接的検出に挑む。現在までに、量子電磁力学計算および高エネルギー原子核衝突の流体・粒子描像複合模型計算の助けを得て、現存衝突型加速器において、直接生成仮想光子の非等方生成、偏極、崩壊電子・陽電子対非対称性の 3 測定量が検出可能な領域との、定量的見積を確立した。熱的光子探索において実光子以上に有効な手段と示した仮想光子測定に特化する新着想により、高エネルギー原子核衝突反応における高強度磁場生成を初めて検証し、電子の臨界磁場を超えた量子電磁力学の非線形領域に初めて実験的に踏込み新規な研究舞台を創始する。 平成 26 年度は、LHC 加速器 ALICE 実験および RHIC 加速器 PHENIX 実験における原子核衝突反応事象を用いて、低不変質量領域(100-300 MeV/c2)の電子・陽電子対生成を測定し、生成粒子の集団運動解析に用いる反応平面を基準として、生成磁場方向に関する仮想光子生成の非等方性と偏極、および衝突反応軸に対する仮想光子崩壊電子・陽電子の荷電非対称性の検出を推進した。 全仮想光子の生成非等方性、偏極、崩壊電子・陽電子対非対称性から、ハドロン崩壊光子を中心とする背景雑音光子の寄与を差し引き、量子色力学過程に起因する直接生成光子起因の非等方性、偏極、非対称性を抽出する。高エネルギー原子核衝突反応における高強度磁場生成の最初の直接的検出となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成 26 年度に計画した直接生成仮想光子の非等方性および偏光の抽出解析と並行して、当初は平成 27 年度に計画した衝突反応軸に対する仮想光子崩壊電子・陽電子の荷電非対称性の検出解析も大きく進展した。 高強度磁場の物理の重要性が広く認知されつつあり、理論面でも多くの物理議論が進展中である。
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今後の研究の推進方策 |
LHC 加速器における TeV 領域の鉛原子核相互衝突反応および RHIC 加速器における 100 GeV 領域の金原子核相互衝突反応において、電子・陽電子対検出による仮想光子測定を新たな次元に敷延展開し、電子と陽電子の角度分布非対称性から仮想光子の非等方生成、偏極、崩壊電子・陽電子対非対称性の 3 つを測定する。この際、量子電磁力学計算と高エネルギー原子核衝突反応の流体・粒子描像複合模型計算を駆使して、期待される信号強度と差し引くべき背景雑音成分を定量的に評価して、ハドロン崩壊光子に代表される背景雑音の差引により、直接生成光子成分を抽出する。量子色力学過程に起源を持つ仮想光子の、衝突系の巨視的回転方向に対する非等方性に関する複数の測定により、宇宙最高強度の磁場生成と時空発展を直接的に検出する。電子の臨界磁場を上回る高強度磁場生成を実験的に確立し、非線形量子電磁力学の研究舞台を開拓する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成 26 年度には当初、流体・粒子描像複合模型計算による磁場の時空発展の理解に向けた研究会主催を計画したが、直接生成仮想光子の非等方性および偏光の抽出と衝突反応軸に対する直接仮想光子崩壊電子・陽電子の荷電非対称性の検出に向けた、実データ解析手法の確立を優先し、同研究会については平成 28 年度に計画する非線形量子電磁力学への挑戦に掛かる研究会との併合を検討して、開催を見送ったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
LHC 加速器 ALICE 実験と RHIC 加速器 PHENIX 実験の双方において、直接生成仮想光子の非等方性および偏光の抽出と、衝突反応軸に対する直接仮想光子崩壊電子・陽電子の荷電非対称性の検出を目指し、実データ解析を一層推進し、並行して、連携研究者との協力をさらに強化し、高強度磁場生成に関わる物理理解と高強度場の下で発現する非線形量子電磁力学に関わる物理議論を深化させるため、次年度使用額は平成 27 年度助成金と併せ、旅費等に使用する。
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