研究実績の概要 |
本研究は、低コストで大面積湾曲可能なピクセル検出器の実用化をめざして、有機半導体の利点を生かした構造を持つ放射線・粒子線検出素子の開発を目的としている。初年度は、有機半導体素子の基礎特性測定と粒子線検出器試験手法の確立に重点をおいた。 検出素子として、有機半導体材料であるジナフトチエノチオフェン(DNTT)を用いて、有機薄膜トランジスタを数種類のドレインーソース間距離(L)と幅(W)の組み合わせで2種類の厚みtのものを製作した。(L=5,20,50,100μm)×(W=100,200,500,1000μm)×(t=100,500nm)の計32種類。それらの素子についての基礎特性測定では、リーク電流はWに比例し、Lにはあまり依存性がなかった。厚い方がVdsの増加によるオフリーク電流増加が少なかった。 検出器信号読み出し回路では、電荷積分型増幅器としては、別プロジェクトで開発中の低雑音集積回路が完成し、基礎特性の測定結果が良好だったのでこれを使用した。 放射線検出器としての動作試験を、粒子線検出に有利と思われるW/L/tパラメータの組み合わせで行った。アルファ線源テストと原研・高崎量子応用研究所のTIARA施設でのXeビーム照射テストをしたが、現在までのところ、放射線によるパルスが識別できるところまでに至っていない。検出素子で発生する信号パルスが予想より小さかったため、信号がノイズに埋もれていると思われる。素子と回路の接続による浮遊容量と外来雑音の混入を減らして、信号に対するノイズ・レベルをもっと下げる必要がある。検出器信号を大きくするための有機半導体の膜厚・構造・材料の再検討だけでなく、検出回路全体の徹底したノイズ対策が今後の重要な課題である。 検出器試験方法は、平行して進めている別種類の検出器試験を通じて有効性が確認されている。
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