研究課題/領域番号 |
26610075
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
齊藤 正俊 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器科学支援センター, シニアフェロー (30391783)
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研究分担者 |
熊木 大介 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (80597146)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機半導体 / 放射線検出器 |
研究実績の概要 |
本研究は、有機半導体の特性を生かした低コストで大面積化可能な放射線検出素子の開発を目的としている。今年度は、粒子線照射により素子内で発生する信号を確実に検出するため、有機TFT素子と信号読み出し回路のS/N比改善に重点をおき、改良を重ねた。その結果、量子ビーム照射実験において、有機半導体内で発生した重粒子イオンの信号を検出した。 改良点は次の通りである。デバイスによってオフ・リーク電流がばらつき、ベースライン電圧が飽和しないように、TFT素子-プリアンプ間接続をDC結合からAC結合に変更したうえで、(a)検出素子の改良:リーク電流を減らすため、ソースとドレインの電極形状を5本1組の櫛型から1本に変更した。TFT-アンプ間の配線浮遊容量を減らすため、素子基板を小型化して、プリアンプの間近に設置できるようにした。デバイスと信号ケーブルを接続する専用クリップをやめて直付けにし、配線距離ができるだけ短くなるようにした。(b)プリアンプ基板の改良:入力部容量を減らすため、電荷積分増幅素子の基板実装方法を、パッケージ実装からベアチップを基板上でワイヤーボンディングする方式に変更した。基板上の入力信号配線もできるだけ短くした。(c)読み出し回路系のグラウンド処理もノイズが少なくなるように工夫し、プリアンプの基板実装や整形アンプの最適時定数割り出し等、読み出し回路系の改良を充分に行った。 今年度は、有機TFTのL/Wの組み合わせをいくつか試し、適正なパラメータ領域をおおよそ確認できた。最終年度は、今年度行う予定だった有機層の検出器構造の再検討についても、電荷収集効率を上げることができるように変更し、研究を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子ビーム照射実験では、評価システムのS/N比向上や適正条件出しが進展し、有機半導体からのビーム起因の信号が見える成果があった。しかし、時間が足りず、検出器のバイアス電圧依存性などの詳細試験が行えなかったため、予定していた異なった素子構造の検出素子の実験はできなかった。しかしながら、研究者間合意により、最終年度に提案素子の製作と評価が可能になったため、目的としていた研究は進められる。 信号読み出し回路は、プリアンプ基板の改良や整形アンプの最適時定数割り出し等により、かなり低雑音化できた。今後、検出素子については、有機層の構造の変更等により、大きな信号波高が得られるように議論を重ね、構造を決めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
以下により、検出器システムのS/N比を改善して、安定した信号検出ができるようにする。 1. 有機半導体素子の改良: 層構造を変更して電荷の収集効率を上げ、粒子線により有機層に発生する信号波高をより大きくする。オフ・リーク電流を小さくして、ノイズ量を減らす。 2. 検出素子-プリアンプ間接続の変更: プリアンプのできるだけ近くに素子を設置して配線距離を短くし、配線浮遊容量を減らすことにより、検出器電荷収集効率を改善する。 3. 実験条件の最適化: 素子の電気的性質を詳細に測定して、検出器としての最適な印加電圧条件を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額のため、次年度に繰り越し
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品購入費に含める
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