研究課題/領域番号 |
26610076
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
吉田 光宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 准教授 (60391710)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超伝導 / 加速器 / 極低温冷凍機 |
研究実績の概要 |
超伝導加速空洞の適用範囲は、近年急速に広がっており、国外では大型の放射光等が既に運用されている状況である。しかし高電界のNb超伝導加速器では1.5K冷却という大きな問題がある。 本研究では、従来1.5Kでしか運用できなかったNb超伝導加速空洞を4Kで運用、つまり液体Heまたは4K機械式冷凍機で直接運用可能にするための研究開発を行う。これによりNb超伝導加速空洞の最大の問題であった液体Heの蒸発冷却という冷凍機の負荷を大幅に緩和する事ができる。しかし今までNbより転移温度の高い物質を高電界の超伝導加速空洞に使用する試みは失敗している。そこで実績のあるNb表面は保持しつつ、超伝導の物性を良く理解し、近接効果、NIS冷却、異常表皮効果の抑制などの最先端技術を導入し、全く新しいNb超伝導加速空洞を創生する。 本研究では、従来1.5Kでしか運用できなかったNb超伝導加速空洞を4Kで運用、つまり液体Heまたは4K機械式冷凍機で直接運用可能にするための研究開発を行う。これによりNb超伝導加速空洞の最大の問題であった液体Heの蒸発冷却という冷凍機の負荷を大幅に緩和する事ができる。 平成26年度は、Tcの高い超伝導材質としてNbNの成膜条件の最適化を行い12K程度の転移温度を得た。これを使用して近接効果によるNbのTc向上やQ値の向上を評価している。 Q値の評価は、TE01試験空洞のエンドプレートを様々なサンプルに変更して評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tcの高いNbNの成膜の条件出しが完了し、転移温度の向上が確認された。 これを利用した近接効果や、絶縁体レイヤーの評価などが既に順調に進展している。 またQ値の評価装置についても、CPWを用いたMKIDsタイプのウェハー上でのQ値の評価や、TE01の空洞のエンドプレートを交換する方法の評価装置により、様々なサンプルのQ値の評価が進んでおり、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
既に薄膜超伝導の転移温度の向上には成功しており、これを用いて、近接効果によりNb表面にクーパー対を供給する方法、絶縁体との多層にする事で電子散乱を抑制する方法等の最先端の超伝導技術を融合する研究を推進する。 これらをウェハーレベルでの実証試験・測定を行った後、超伝導加速空洞を形成するための成膜装置を改良し、さらにこの空洞を用いて高電界試験を行う。 またNIS冷却についても今後評価を行っていく。 NIS冷却は常伝導と超伝導を薄い絶縁層で挟んだ構造であり、超伝導側ではクーパー対のエネルギーバンド2Δ内に状態が存在するのに対して、常伝導側はフェルミ分布しているため、高エネルギーの電子が存在し、これをバイアスをかける事で超伝導側にトンネル効果で抜き取る事で常伝導側を冷却する事ができる方法である。これをAl-絶縁体-Nbで計算すると最適なバイアスでは35pW/μm^2程度の冷却能力が得られるという事がシミュレーションで分かっている。このNIS冷凍機の試験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
NbNの成膜における転移温度の向上が順調に成功し、この詳細な評価を十分に実験で評価してから、近接効果の評価に取り掛かる事とした。特にバッファ層を加える事で格子間隔が調整され、さらに高い転移温度が得られる可能性があるため、これらを評価してから次年度に進む事にした。
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次年度使用額の使用計画 |
NbNの転移温度をさらに改善するためバッファ層を入れた成膜条件を調整する事に使用する。
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