研究課題
H27年度は、前年度からの開発を完成させ、絶対値定量計測装置の対応波長域を400nmまでカバーできるように装置と校正ツールの開発を行い、15%程度の不確かさで発光絶対量を決定できるようになった。陸上生物であるホタル生物発光は、発光ピークが560nm-600nmのものが代表的であるが、他の生物発光、特に海洋生物の場合には、青色の発光系が多く、それらに対応できる体制が整った。実際にこの系を用いて、遺伝子工学的手法を用いて生合成された、オワンクラゲの発光系であるイクオリンについて、定量計測を行った。遺伝子工学的に作られたイクオリンは、アミノ酸残基配列が正確にわかるので、1分子あたりの各種のアミノ酸残基含有量がわかる。アミノ酸分析を行うことで、測定に用いた試料溶液のイクオリン濃度を正確に定量した。これらの実験から、イクオリン生物発光の量子収率を決定することが出来た。下村らの測定結果との比較・検証を行った。生物発光制御機構の理解に向けて、ホタル生物発光のルシフェラーゼやオワンクラゲ生物発光のイクオリンなどのタンパク質酵素の動的な構造を、分子動力学計算によりシミュレートした。また、一方で、反応基質であるルシフェリンやセレンテラジンの反応中間体や反応生成物に対する量子化学計算を水溶液中の場合について行った。水和効果すなわち水分子の配置と水素結合の効果をpH依存性も含めて取り入れるため、分極連続体媒質モデルを用いて行う量子化学計算結果に対して、モデル分子の実験結果として得られるpKaの値を用いて補正を行うアプローチを試み、無矛盾の結果を得た。理論的妥当性の検証や、タンパク質背景を含めた計算を進めてゆく前段階の試行研究として有意義であった。
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