研究実績の概要 |
超流動ヘリウムという特殊な環境下で、物質に高強度レーザーを照射してその表面を破壊する、レーザーアブレーションという手法を用いることで、物質の結晶構造によらず、他の環境では作製が困難なミクロンサイズの真球状単結晶を作製することを行った。 既に報告してきた、異方的なウルツ鉱型構造を有するために針状結晶などが生じやすいZnOやCdSeなどの真球形状化に加え、等方的な結晶構造を有するSi, GaAsなどにおいても結晶性の高い真球を得ることに成功し、手法の一般性を示した。超流動ヘリウム中で物質を溶融することが可能な程度の強度を有するレーザーを照射することで表面を融解させると、生成した融液は表面張力によって真球状となり、その形状を保ったまま徐冷されて結晶構造をとるものと推測される。ここで、融液の温度は一般にヘリウム温度より桁違いに高いため、真球状の融液は蒸発した気体ヘリウムで覆われていて、急冷が生じないものと考えている。この徐冷の際、融液は周囲の液体から等方的な圧力を受けているため、針状など固有の構造を取れず、真球形状が維持される。なお、具体的に名称を挙げた物質以外にも、多くの二元化合物に対して、この手法による真球状単結晶作製に成功している。 一方、マイクロサイズの誘電体真球は光を閉じ込める共振器として動作し、高効率なレーザー発振や高感度なセンサーなど、数多くの応用が期待されている。実際、作製に成功したZnOやCdSeなどにおいても、そのレーザー発振に成功している。しかしながら、ZnOにおいては、バンド端の紫外発光に加えて酸素欠陥による可視発光帯も生じ、後者のレーザー発振は確認したものの、バンド端発光がレーザー発振している確証は得られていなかった。本研究では、低温におけるマイクロ球の単一粒子計測を実施し、発振の閾値を決めること、すなわち、バンド端発光においてもレーザー発振を観測することに成功した。
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