研究実績の概要 |
2個の励起子の自己束縛状態は空間分離して生じるのか、同一サイトに生じるのかを理論的に調べ、パラメーター(格子緩和S, クーロン反発U, バンド幅B)の相図にまとめた。1次元ではS=Uが境界となる。2次元、3次元では1個では自己束縛は生じないが、2個の励起子が協力してはじめて自己束縛する領域が出現する。また、拡張パイエルスハバードモデルを用いて光励起後の格子緩和ダイナミクスを調べたところ、1個の励起子を生成した直後の格子緩和中であれば、次の励起子生成には通常よりも低いエネルギー値で可能であることが判明した。 組成を意図的にコントロールしたフェナジン-(TCNQ1-xFTCNQx) 混晶の作成を試みた。少なくとも、x=0.4, 0.6 の混晶を作り分けられることを確認し、それぞれの構造解析、電気伝導度の温度依存性、赤外吸収スペクトルを測定した。x=0.4の混晶では、結晶と同型構造をとりドナー分子・アクセプター分子の面間隔が一様であるのに対し、x=0.6の場合では、分子の配列に2量化が見られた。一方、x=0, 0.4, 0.6, 1と変化させるにつれ、室温での電気伝導度は10-9から10-6S・cm-1にかけて大きくなって行き、また活性化エネルギーも0.90eVから0.36eVにかけて小さくなっていく。 ジアセチレン結晶の嫌光性は140K以下の温度で抑制されることが知られている。5,7-dodecadiyne-1,12-diol bis(phenyl carbamate)単結晶において、100cm-1以下の低周波数ラマン散乱スペクトルの温度依存性を測定した。ジアセチレン分子全体あるいは側鎖の全体的な運動に関わる4つのピーク位置の温度依存性は、いずれも分子振動の非調和項を考慮することで説明できる。一方、これらピークの強度は、温度低下とともに減少し、140Kでほぼ消失する。これは、側鎖秩序の変化により、分子の対称性変化を伴う相転移を示唆し、ジアセチレン結晶の嫌光性は分子のコンフォメーションと関連すると考えられる。
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