ごく最近,申請者は,フォトニック結晶のブリルアンゾーンの中央にディラックコーンを実現する方法を発見した。ディラック点では実効的屈折率がゼロなので空間的な位相変化が無く,光伝搬に伴う波面の変形も無いという著しい性質がある。本研究は,申請者が独自に開発した解析的な手法に基づき,光波領域のディラックコーンを実現するフォトニック結晶の試料構造の提示とディラックコーンの高精度な検出法の考案を第1の目的とする。また,ゼロ屈折率による光散乱の低減や,バンドオフセットによる有効質量の制御等の新しい物理現象の提示を第2の目的とする。さらに,電子波やマグノン等の電磁モード以外の素励起への理論の拡張,特に,極端に小さな有効質量をもつ励起子ポラリトンによる高温ボーズ凝縮の可能性の追求を第3の目的とする。 平成27年度までに,ディラックコーンを実現するフォトニック結晶の試料構造を算出した。また,偏光特性を利用したディラックコーンの検出法の考案,バンドオフセットによる有効質量の制御法の考案,電子波ディラックコーンへの拡張などを達成した。研究成果のとりまとめのために研究期間を延長し,平成28年度には,周期的に変調した半導体量子井戸の電子波のディラックコーンに関する論文発表1件,および,光ディラックコーンに関する国際会議での招待講演2件を行った。後者は,4th Advanced Electromagnetics Symposium(開催地:スペイン)と37th Progress in Electromagnetics Research Symposium(開催地:上海)であるが,平成27年度実施状況報告書の研究発表欄に「発表確定」として記入したので,この実績報告書の研究発表欄には記載していない。
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