26年度の研究では、SrVO3薄膜を(001)方向に成長させ、原子像を捕らえると共に、電子の量子力学的な干渉パターンを観測することに成功した。干渉パターンの可視化は単純ペロブスカイト酸化物(ABO3)表面では始めての成果であった。27年度はさらに高品質な薄膜表面を得るための成膜条件を探ると共に、膜厚を変えた試料の作成も行った。さらに、cubicであるSrVO3の表面で、干渉効果が発現するメカニズムを理論的に考察した。バルクでは縮退していたt2g軌導の縮退が表面では解け、dxy軌導が安定化することが電子の干渉パターンを実現させている理由であることを明らかにした。
26年度の研究の終盤では、LiTi2O4(111)薄膜表面で原子像の観測に成功した。さらに、27年度は、STMを用いた高分解能トンネル分光を行うことで、この表面で超伝導ギャップならびに磁束量子の観測に成功した。理論的な考察も進めることで、表面の超伝導はギャップが開きかけた電子状態(擬ギャップ)で発現しており、バルクの超伝導から変調されたものであることがわかった。
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