研究課題
次世代のクリーンなエネルギー社会の実現に向けて、水素から電気エネルギーを取り出す燃料電池が注目を集めている。燃料電池は、アノード電極で、水素を取り込んでプロトンと電子に分解し、プロトンは電解質膜を、電子は外部回路を伝導して電気エネルギーとなり、カソード電極で、このプロトン、電子、酸素が反応して水を作る。現在プロトン伝導の電解質として、液漏れがなく、環境調和型の無水有機プロトン固体電解質の研究が必要とされている。本研究課題では、無水の酸ー塩基型純有機超プロトン伝導体を開拓することを目的としている。具体的には以下の手法で進める提案を行った。(1)一連の弱酸ジカルボン酸ー弱塩基イミダゾールのプロトン伝導体を合成し、結晶成長を行い、(2)X線構造解析やプロトン伝導の温度・周波数依存性により伝導機構の解明を行い、(3)明らかにされた設計指針により、超プロトン伝導体を開発することを目的とした。平成26年度は、(1)に示すように、弱酸として一連のジカルボン酸[HOOC-(CH2)n-COOH; n=1-10]、また弱塩基として様々なイミダゾール誘導体から、条件を最適化することによって共晶塩を作成し、X線結晶解析から構造を決定し、熱測定で融点あるいは分解点を求めた。また、(2)のプロトン伝導測定を行うために、2ー450Kまでの温度範囲で、また10Hz-10MHzまでの周波数応答が観測できるようなインピーダンス装置を整え、減圧下でサンプルペレットを作る手法を確立し、コールコールプロットでデータを解析する方法を整えた。その結果、イミダゾール・コハク酸の無水純有機有機プロトン伝導体で、2x10*(-4)S/cmの伝導度を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
予定通り、(1)一連のジカルボン酸と、様々なイミダゾール誘導体から、純度の高い共晶塩を作成し、X線結晶構造解析、熱分析測定でキャラクタりぜーションを行い、また、(2)プロトン伝導測定を行うために、サンプルペレットを作る手法を確立し、インピーダンス装置を整え、イミダゾール・コハク酸の無水純有機有機プロトン伝導体で、2x10*(-4)S/cmのプロトン伝導度を得ることができた。
得られた一連のジカルボン酸とイミダゾール誘導体の共晶塩について、結晶構造、熱測定、プロトン伝導測定を行い、構造と伝導性の相関より、プロトン伝導の機構について考察を行う。そして、高伝導を与える分子設計指針より新物質合成を行い、液体にも匹敵する10*(-2)-10*(-3)S/cmの伝導度を無水有機伝導体で実現することを目指す。
無水の有機プロトン伝導度測定には、ペレットに入る水分の影響を調べることは重要である。そのため、真空下での測定を遂行する装置を購入予定であったが、納入が26年度に間に合わず、27年度に購入する予定である。
水分の影響を調べるために、真空下での測定を行うため、専用装置を27年度に購入する予定である。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (24件) (うち招待講演 9件) 備考 (1件)
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