研究課題
次世代のクリーンなエネルギー社会へ向けて、水素から電気エネルギーを取り出す燃料電池に注目が集まっている。燃料電池は、アノード電極で水素を取り込んでプロトンと電子に分解し、プロトンは電解質膜を、電子は外部回路を伝導して電気エネルギーとなり、カソード電極で、このプロトン、電子、取り込んだ酸素が反応して水を作る。現在プロトン伝導の電解質として、液漏れがなく、環境調和型の無水の有機固体プロトン電解質の研究が必要とされている。水を含む系については、100℃以下での利用となるが、本研究では、無水で200-300℃まで安定な中温域で動作する無水プロトン電解質を対象とする。本課題では、(1)室温で10-2 Scm-1以上の無水の純有機プロトン伝導体を設計、合成し、(2)その結晶構造、プロトン伝導性より伝導機構を明らかにし、これまでに見出されていない分子性物質の良さを生かした(3)純有機無水の超プロトン伝導の開拓に挑戦する。本研究では、純プロトン伝導体として、無水酸-塩基型のイミダゾールージカルボン酸の塩を対象とする。(CH2)n(COOH)2 (n=1-4)とアルキル鎖が長くなると直流伝導度は降下するのに対し、驚くべきことにn=6,8では上昇しており、n=8の室温付近では10-1 Sm (=10-3 Scm)と高いことが、パウダーペレットの系であるが報告されている。この系について、単結晶を作製し、交流伝導度の異方性の測定に成功したので、構造物性との相関を考察しながら、このプロトン伝導について機構解明を行う。また、周辺物質で超プロトン伝導体の開拓に挑む予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
弱酸ー弱塩基の共結晶として、イミダゾールーコハク酸、イミダゾールーグルタール酸の単結晶を作製し、3方向の交流伝導度を測定して、水素結合ネットワークとその垂直方向での異方性を観測した。結晶構造との対応で、プロトン伝導はその分子運動と水素結合ネットワークが重要であることを明らかとした。
イミダゾールージカルボン酸(CH2)n(COOH)2において、nの大きな長いジカルボン酸についても、プロトン伝導を測定し、アルキル基の効果を考察する。そして、純有機プロトン伝導体の高プロトン伝導性について方針を見出す。
無水純有機プロトン伝導体であるイミダゾールとジカルボン酸について、プロトン伝導性の可能性を追求するために、より長いジカルボン酸についてプロトン伝導性を測定し、構造との相関を調べる。
プロトン伝導体を合成し、測定ための試薬代などの消耗品、成果を発表するための旅費、学会登録費用として使用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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http://hmori.issp.u-tokyo.ac.jp/