研究実績の概要 |
2015年度はパイロクロア型イリジウム酸化物R2Ir2O7のバンド幅制御型モット転移の過程における反強磁性磁壁の伝導性を系統的に調べた。またスタンフォード大学との共同研究でマイクロ波伝導度顕微鏡を用いて伝導性磁壁の実空間観測を行った。 本系では希土類イオンのイオン半径を変える事で一電子バンド幅を実効的に変えることが出来る。R=Sm,Nd,Prの混合比を精密に制御した試料を合成し、電荷輸送特性を各組成について調べた所、Pr0.7Nd0.3の混合比付近でバンド幅制御型のモット転移が生じる事が分かった。磁壁の電気伝導性を巨視的な電荷輸送特性によって評価する事は容易ではないが磁気抵抗測定によってバルクの伝導性が含まれた形で定性的に評価する事ができる。磁気抵抗に見られる磁壁の伝導性の寄与についても各組成で調べた所、R=Nd0.4Sm0.6よりもバンド幅が狭い組成領域では磁壁の伝導性が見られないことが分かった。この組成はバルクの常磁性領域で金属・絶縁体クロスオーバーが生じる点に対応しており、磁壁の伝導性との関連性が考えられる。 また、スタンフォード大学のShenグループと共同でマイクロ波インピーダンス顕微鏡を用いた電気伝導度の実空間イメージング測定を行った。ここでは多結晶試料を用いたが5T以上の磁場で磁壁が消失していく様子が確認された。2端子法で抵抗率測定を行ったところ磁壁当り1kΩ程度のシート抵抗を示すことが分かった。
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