研究実績の概要 |
ワイル半金属と呼ばれる新しいトポロジカル相の候補物質であるパイロクロア型イリジウム酸化物について、単結晶薄膜・ヘテロ界面の作製を行い、時間反転対称性の破れた二種類の磁気ドメイン(all-in-all-out・all-out-all-in秩序構造)とその界面における伝導現象の研究を進めた。 具体的な実績として、系統的な絶縁体金属転移を示す一連のパイロクロア型イリジウム酸化物(R2Ir2O7, R=Pr, Nd, Eu, Gd, Tb, Dy, Y)単結晶エピタキシャル薄膜の作製に成功し、磁気モーメントやエピタキシャル応力の違いを踏まえた冷却・挿引磁場による磁気ドメイン構造の制御手法の体系化に成功した。また、二種類の磁気ドメインの磁気応答の違いを利用して、パイロクロア型イリジウム酸化物薄膜における磁気ドメインサイズの決定を行った。さらに、挿引磁場に対して応答の異なる二種のパイロクロア型イリジウム酸化物からなるヘテロ接合を作製し、all-in-all-out/all-out-all-in磁気ドメイン壁の形成に伴う界面伝導の観測を行った。これにより、単一磁気ドメイン壁における伝導状態の温度依存性の評価や異常ホール効果の検出に成功した。
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