研究課題/領域番号 |
26610100
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 憲昭 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30170773)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 準結晶 / 近似結晶 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
(1)Au-Al-Yb近似結晶の高圧下物性計測 1.8 GPa程度より高圧になると、Au-Al-Yb近似結晶の交流磁化率に磁気異常の現れることが見出された。これが磁気長距離秩序によるものか、スピングラスによるものかを解明するため、周波数及び外部磁場依存性を測定した。その結果、磁場依存性についてはスピングラス的挙動が観測されたものの、周波数依存性についてはスピングラスに特徴的な様相は見出されなかった。磁気長距離秩序/スピングラスのいずれであるかについては、更なる検討が必要である。 (2)Au-Al-Yb準結晶の高圧下物性計測 Au-Al-Yb準結晶の高圧下物性計測は、これまで1.7 GPa程度の圧力域に留まっていたが、平成26年度においては圧力域が2.3GPaまで拡張された。その結果、予想通り、量子臨界性が不変であることがかなり確からしいものとなってきた。今後は、測定領域をより高圧域まで拡張する。 (3)ボース凝縮相を示す準結晶あるいは近似結晶の探索 平成26年度には、準結晶と同じ局所構造を持つ近似結晶において、2種類の超伝導物質の探索に成功を収めた。いずれもAu-Ge-Ybの3元系から構成されているが、組成がわずかに異なる。X線構造解析を行ったところ、これら2種類の超伝導体は、蔡型クラスターの最中心部の構造が異なることが判明した。中心部がYbイオンである場合は価数搖動的な磁性を有し、非磁性イオンの4面体である場合は(全体としても)磁性を持たないことが明らかとなった。さらに、磁性を有する場合の方が超伝導転移温度の低いことが明らかとなった。なお、これらは学術雑誌に掲載され、Editor's choiceに選ばれた。今後は、これを起点にして、超伝導を示す準結晶の探索を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要研究目的の1つである「蔡型クラスターを持つ超伝導近似結晶」を世界に先駆けて発見し、その磁性と超伝導に相関のあることを示唆する結果を得たことが最大の理由である。但し、超伝導を含め何らかの長距離秩序を持つ準結晶の発見という大きな課題は残されている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Au-Al-Yb近似結晶の高圧下物性計測 交流磁化率に観測された磁気異常は100mKという極低温であるため、その起源を解明することは容易ではない。今後は、まず圧力を高めることにより転移温度を上げ、次に周波数依存性などを精度よく測定する予定である。 (2)Au-Al-Yb準結晶の高圧下物性計測 H26年度まで用いていた高圧セルに改良を加え、5 GPa程度の圧力域まで加圧可能なセルを作製する。次に、これを用いて、交流磁化率などの測定を行い、量子臨界性が加圧に対し不変であることを実証する。 (3)ボース凝縮相を示す準結晶あるいは近似結晶の探索 超伝導などの長距離秩序を示す蔡型クラスター準結晶を引き続き探索する。それと並行し、蔡型クラスター以外のクラスター構造を有する準結晶の超伝導探索を行う。
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