本研究は、超流動ヘリウムの典型的実験手法であるねじれ振り子法を超伝導研究に応用し、超伝導を力学的に観測する手法を確立すると共に、トポロジカル超伝導で期待される熱流・回転交差相関効果の探索を行う者である。超伝導体表面から磁場侵入長程度の深さの電子は、超伝導物質の振動に追随せずに、電子の質量超流動として検出される可能性がある。更に、ねじれ振り子では超伝導物質に誘起された角運動量を高精度で観測できることから、最近トポロジカル超伝導体に対して予言されている、熱流と角運動量の交差相関効果(円柱資料軸方向に温度差を与えると、円周方向に角運動量を生じる効果、及びその逆効果)を実験的に探索する。 平成27年度は、前年度に引き続いてアルミニウム5056合金とコインシルバーを用いたねじれ振り子の特性改善と、実験に用いる回転クライオスタットの動作安定化を試みるとともに、回転クライオスタットを用いた予備的実験として円環状超流動ヘリウムに対する回転効果の測定と、超伝導体の角運動量測定も意図したねじれ振り子の製作を行った。ねじれ振り子については製作を完了し、低Tc超伝導体であるIr円環試料を用いた実験に入るところである。回転クライオスタットについては装着したねじれ振り子の安定動作および温度の安定化技術を確立した。これを用いて円環状超流動ヘリウム4容器をもつねじれ振り子を用いて第2音波・ねじれ振動結合系に対する回転効果の測定を行い、回転速度がある閾値(0.2rps)を超えたときに、回転を静止後も量子渦が残留することを示唆する結果を得た。これは予想外の結果であるため、詳細な測定を継続中である。また、超流動3He・トポロジカル超伝導体の角運動量測定のための低周波数ねじれ振り子を設計し製作を行った。これを用いることで超伝導体の質量超流動や熱角運動量交差相関効果の研究を進める予定である。
|