前年度研究で発見された数値サンプリング領域ならびに熱力学量の2度にわたる劇的な変化を相転移現象の観点から調べ、それぞれ、1次転移と2次転移の中間的な性質を持つ新奇な相転移と、比熱の凹みとして見出される現象であることを明らかにした。この成果は国際研究会『Adiabatic Quantum Computing Conference 2016』ならびに『Workshop on Theory and Practice of Adiabatic Quantum Computers and Quantum Simulation』で発表され、またJournal of the Physical Society of Japan誌から論文として出版された。 また、量子相転移の振る舞いを通して量子アニーリングに対する本模型の計算量的性質を明らかにする目的で、横磁場アニーリングにおける最小ギャップの振る舞いを小さい合成数の場合に関して網羅的に調べた。ハミルトニアンの厳密対角化により数値的にアプロー チしたが、合成数の桁が小さくサイズ依存性がまだ明らかにならないため、相転移の振る舞いを明確にするには至っていない。この点を克服するため、量子モンテカルロ法によるギャップ評価を試みている。 このほか、ハミルトニアンの対称化などにより最小ギャップを拡大する試みなどについての着想を得、素因数分解問題を量子アニーリングによって解く試みについての研究を開始している。
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