最終年度では、ランダムポテンシャルがある格子模型において、乱れた軌道が凍結する現象について論文を出版した。昨年度に投稿したものだが、平衡統計力学との関係など、いくつかの論点について補強した。実際にこの模型では、一段階レプリカ対称性の破れを示すランダムエネルギー模型と等価であるが、格子模型としてみたときの振る舞いはレプリカ対称性の破れを示すものではないのが混乱の一つである。そして、軌道の統計力学とみたとき、一段階レプリカ対称性の破れを示すという我々の結果がとまどいを与えたらしい。いずれにせよ、これらの論点は明快になった。 期間全体については、アクティブな場で駆動されるブラウン粒子の軌道がレプリカ対称性の破れを示すという結果がPhys. Rev. Lett. に出版されたのが最大の成果である。これは、時間発展の乱れのアンサンブルが凍結するという新しい概念に向けた貴重な一歩である。 また、有限次元において不規則な配置が凍結する模型を探索する問題は、機関全体を通して不調に終わった。良い候補となる模型を見つけたが、その模型に対する理解を完全にすることができなかった。また、今年度は、厳密に議論する方針で模型を構築しようとしたが、うまくいかなかった。問題の難しさを納得するという結果だとも言える。ただし、その過程で行った試行錯誤、および、多くの研究者との議論によって得たことは多い。今後の研究を行う上での基盤となったのは間違いない。
|