研究課題/領域番号 |
26610117
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
西森 拓 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50237749)
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研究分担者 |
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 生物資源フィールド研究部門, 教授 (40414875)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会性昆虫 / 自己組織化 / 自動分業システム |
研究実績の概要 |
本年度の研究のセールスポイントの一つは、西森と秋野が技術協力関係を結んだ企業で開発中の世界最小レベル(一辺0.5mm)微小RFIDチップ・情報読み取りセンサー・PCを連動させることで、大量のアリの個別行動履歴を追跡しデータ化できる個体認識自動計測システム(以下自動計測系)を新たに構築することであった。RFIDチップやセンサーなどは企業側の開発であったが、アリの行動に合致した様々な実験プロトコルの設計、個別のアリへのチップ貼付、計測ソフトの開発や最適化など、多くの技術的課題を克服しつつあり、試作実験系は完成し簡単な労働データが得られ始めた。具体的には、多数のアリからなるコロニー内での各アリの一定期間中の採餌頻度をデータ化することに成功し、次のことが(少数サンプルによる予備段階であるが)判明した。
1.採餌頻度はアリの個体に依存して異なる。すなわち採餌に関しての勤労度の階層が存在する。 2.コロニーから採餌頻度の低いアリの集団や高いアリをの集団を取り除いた場合、コロニー内に残ったアリが除かれたアリ集団の採餌行動様式を補填し、これによって、コロニーとしての採餌頻度分布の概形は大きく変化しない。 3.採餌頻度の順位付けは、短期間(数日)では大きく変化しないが、長期間(月単位)を経て大きく変動する。 これらのうち1,2の事項は、従来の実験結果を支持するものであるが、本研究で導入した自動計測系により、きわめて効率的なデータ採取が可能となった。また3の事項は、アリの労働分業の機構を表すモデルとして、従来広く信じらてきた反応閾値モデルの見直しの必要性を示唆するものと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来構築困難と考えられてきた、集団内での各アリの個別行動を長期間自動計測する新システムが構築されつつある。これは、共同研究契約を結んだ企業で開発中の世界で最小レベルのRFIDチップを用いて初めて可能となった世界最新の計測システムである。本システムを用いて、本年度は、小規模ではあるものの具体的なアリの集団行動データを取得し解析することに成功し、アリの小コロニーにおける採餌に関するリーダー無しの役割自律制御機構の一部を見ることができるようになった。その結果、研究実績の概要欄で記した予備的な考察に至った。ただし、現時点では計測データの規模は十分ではなく、今後より大規模のデータ収集が必要となり、また得られたデータの解析のための手法の開拓と、データ解析の展開、および数理モデルを介した現象の本質的理解も今後の課題として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度まで構築された個体別行動計測システムを使用・改良し、より大きなシステムでの計測を行う、そしてここから得られた十分な量のデータから、アリのコ ロニーにおける個体レベルでの行動と群れ行動の関連性を調べ上げる。特に、採餌や緊急避難時を中心とした様々な状況での、各タスクに対する活動度ランク、個体間の活動度相関などを明らかにする。さらに、個体間の活動相関から、個体間の相互情報量を算出し、個体レベルでの情報 伝達の正確さ・冗長性などを推定する。さらに、活動の時間相関に応じて、システムをクラスター分解し、得られたクラスター間の情報伝搬も定量化する。これらは、アリコロニーにおける、 階層をともなったモノと知の流れの構造を調べる初の試みとなる。また、コロニーから、活動の高い/低いアリを除去した場合の、活動度分布の変化/維持の様子を見る。これは、先行研究(Wilsonや石井)の検証の追実験に相当するが、従来のものより遥かに大きなサイズのデータから、精度の高い解析結果が期待される。その後、解析結果に依存した形で、分業再編の数理モデルの決定版である反応閾値モデルの否定/拡張を行い世界に発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該計画の実施過程において、実験用の試料の一部が長期間保存できないことが判明し、また、実験計測のデータを増やすため、実験用の昆虫を飼育する施設、計測機器を最終年度も増設する必要が生じた。そのため、本年度に当初予算額の一部を次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
実験用の試料の追加購入費:アリ飼育セット用フルオン液 10万円 昆虫飼育用暗室構築: 10万円 行動計測用pc デバイス一式23万3,781円。 以上を次年度使用額の用途とし、これらによって、本年度に得られた実験データを大幅に拡充し、結果を解分析し、論文として国際誌に投稿・出版する予定である。
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