研究課題/領域番号 |
26610122
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
畠山 温 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70345073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光誘起脱離 / レーザー冷却 |
研究実績の概要 |
年度初めに改めてこれまで予備的に行ってきた実験結果を精査した。そして,既成のガラス材料にアルカリ金属原子を浸透させて光誘起脱離が生じる表面を用意する方法では,応用に十分な脱離が最終的に得られるか定かではないと考え,今期は,ガラスを最初から合成してその段階でアルカリ金属原子を含有させる方法を試みた。炭酸ナトリウムと二酸化ケイ素の粉末を混ぜて加熱することにより,大量(数十%)のアルカリイオンを含むガラス材料の合成ができた。その材料からの光誘起脱離も観測できたが,やはり,高温にしないと十分な量は得られなかった。 ガラス材料にアルカリ原子を含有させることだけにこだわらず,さらに別の方法として,有機薄膜に含有させる方法も試みた。用いた材料は,過去に光誘起脱離が報告されているポリジメチルシロキサン(PDMS)である。真空中でルビジウムを堆積させたPDMS薄膜からは脱離が観測された。さらにその薄膜をいったん大気にさらした後も脱離が観測された。 これらの材料開発と平行して,脱離したアルカリ原子を高感度に検出する検出器の改良を行った。また,アルカリ金属原子を含んだガラス表面をX線光電子分光で分析し,基礎的なデータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ガラス材料にアルカリ金属原子を大量に含有させることで脱離量の向上が期待できると考えていたが,実際作成した結果,十分な脱離量が得られなかった。そこで,別の方法として,有機薄膜にアルカリ金属原子を含有させる方法を試みた。これらの実験に時間が取られ,目標であった,レーザー冷却実験に十分な脱離量をもった材料の準備が完了しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ガラス材料に含有させることだけにこだわらず,有機材料に含有させる可能性を追求する。もしよい材料が開発できれば,真空容器を構成する材料(ガラスや金属)に関わらず利用できるので,むしろ応用の範囲が広がり望ましい。そのような材料ができる可能性は,今年度の予備的な実験から,高いと判断している。ただ,有機材料であるため,真空度が高くならないことも予想される。これらを次年度前半ではっきりさせ,後半はレーザー分光,あるいはレーザー冷却実験を行う。 また次年度最初に,改良したアルカリ原子検出器のインストールを行い,今期の実験に用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
アルカリ原子を高感度で検出する装置の改良を計画して設計を進めていたが,複雑で時間がかかり発注が遅れたことにより,大部分の部品が年度が変わってからの納品となることになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
4月中にすべて部品が納品され,組み立てを完了し,インストールするので,この時点で使用はほぼ完了する見込みである。
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