ガラス基板に堆積したアルカリ金属原子が光誘起脱離する現象を再度精査し,原子供給源としてアルカリ金属原子を含んだガラス基板が可能性があるかを検討した。石英ガラスとパイレックスガラスの2種類について調べたところ,石英ガラスは温度を上げると脱離レートが上がることがわかり,これまでのアルカリ含有ガラスに関する本研究の結果を支持するものであった。逆にいうと,これまでの見込み通り,室温で十分な脱離レートの実現はやはり困難が予想された。そこで,本年度は,ガラスではなく,光誘起脱離がよく起こる材料として知られているポリジメチルシロキサン(PDMS)にルビジウム原子を事前に混ぜ込むことに,いくつかの方法で取り組んだ。真空中でルビジウム原子をPDMS膜表面に堆積して脱離させることはできたが,事前に混ぜ込みを試みたPDMS膜からは脱離は観測できず,そもそもドープに成功したかどうかもX線光電子分光法では確認できなかった。脱離の起きやすいPDMSにRbを十分な量ドープすることは簡単にはできないようである。
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