これまで、87Rbの基底状態超微細構造準位間で異なる光シュタルクシフトが生じる特殊な波長(Tune-out波長)を調べる際の簡便な測定方法として、2光子遷移を利用する方法を目指してきた。昨年度までに、十分な分光精度があることは確認できたが、信号強度の揺らぎが大きく、SNの改善が必要であった。そこで2016年度は、外部共振器型半導体レーザーに3.4GHzの電流変調を加えてサイドバンド光を発生させ、その際に、フリースペクトラルレンジが3.4GHzに共鳴するような共振器長(約44mm)に改造を行った。このことにより、サイドバンド強度が数%から数十%へ増強され、さらに、1次サイドバンド光間の周波数差および強度差の揺らぎが大幅に軽減されて、吸収信号とバックグラウンドの比が改善し、基底状態超微細構造準位間での光シュタルクシフト差が観測可能となった。tune-out波長近傍では光シュタルクシフト量の差の変化は波長依存性が鈍化するため、本来生じない他要因による余分な勾配バックグラウンドが足されてしまう場合、Tune-out波長の同定を誤ってしまう。今回、まだこの余分な勾配が付加された信号になってしまっており、原因を調査中である。本実験では、光シュタルクシフト光としてマルチモード半導体レーザーを使用しているが、自然放出増幅光(ASE)および不要の自励発振モードによって余分な勾配を信号に付加している可能性が考えられるため、今後、他研究グループからチタンサファイヤレーザーを借りて原因の追究を行い、その後、精度の高いTune-out波長同定を行いたい。
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