研究課題/領域番号 |
26610126
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
前田 はるか 青山学院大学, 理工学部, 教授 (80260199)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Rydberg原子 / 単一光子 / ダイポールブロケード / 低周波電磁波検出 |
研究実績の概要 |
本研究は、THz~サブ GHz 領域の低周波帯において動作する準波長可変単一光子源の可能性を追求することを目的としている。これを遂行するための独自の手法として、磁気光学トラップ(MOT)中に蓄えた極低温 Rb 原子を高励起 Rydberg 状態へと励起し、その結果そこに出現するダイポールブロケード効果を利用する方法を用いることを計画した。 本年度は引き続き、昨年度から行っている準備的実験である、原子分光セルを利用した Rydberg 原子超放射による低周波電磁波の観測を行った。その結果、昨年度には観測出来なかった Rydberg 原子からの低周波光放射現象を、異なる手法(EOサンプリング法)を適用することにより観測することに成功した。この結果は原子分光セルに閉じ込められた Rydberg 原子を用いた高感度低周波電磁波の検出を行う可能性を示唆すると同時に、本研究の開始当初では考えていなかった、Rydberg 原子を用いたシングル低周波パルス波形診断法の開発のためのポジティブデータとなり得ると考えられ、今後の展開が期待される。 また、極低温 Rydberg 原子を生成するためのMOTに挿入する、K バンドで動作するファブリーペロー共振器(Q 値 ~ 数1000)の設計を終了し、本年度早々これを MOT に導入し、極低温 Rydberg 原子の放射崩壊現象を検出する準備を終了した。同時に低温 Rb Rydberg 原子にダイポールブロケード効果を誘起するために必要な 480nm シングルモードレーザーシステムの開発を行った。 更に、極低温 Rydberg 原子にマイクロ波を、ファブリーペロー共振器ではなくマイクロ波ホーンをもちいて照射する予備実験を行い、低温 Rydberg 原子とマイクロ波の相互作用に関する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度に生じた排気系の不具合による実験の遅延が、引き続き本年度にも無視出来ない影響を及ぼしたことが第一の理由である。 その他、本実験の心臓部分である K バンドのファブリーペローマイクロ波共振器の作成を依頼するための適当な業者がなかなか見つからず、その選定に想定外の時間がかかった。更には、480nm シングルモードレーザーシステムの開発中に、テーパアンプなどの光学部品の不具合などが多々生じ、ここでも予想外の時間がかかった。また、実験室の室温や空調、湿度などを制御しなければ 480nm シングルモードレーザーがなかなか安定しないことが判明し、ところがこれら設備関連のことは本学では研究室レベルでは解決できない問題であるため、その対応に時間を費やさざるを得なかったことなども遅延の理由としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、MOT 中に導入したファブリーペローマイクロ波共振器の動作を確認することから実験を行う。低温 Rydberg 原子を励起し、マイクロ波を照射することにより、 Rydberg 原子とマイクロ波の相互作用に関する詳細な知見を得、マイクロ波と共鳴的に相互作用する低温 Rydberg 原子の非線形ダイナミクスを追跡する。特に、Rydberg 準位間のマイクロ波共鳴遷移を精密測定することにより、マイクロ波誘起ダイポールブロケード効果の検出を試みる。特に、実験計画にあるように、電場中におかれた Rydberg 原子に誘起される Stark 効果を系統的にブロケード効果に反映させる実験はとても興味深く、ここで行うことを予定する。なお、この実験では Rydberg 原子の励起には扱いの簡単な波長可変パルス色素レーザーを用いる。また、ブロケード効果を精密に測定するために、励起しされた低温 Rydberg 原子数のカウンティングを遂行するための装置の開発(主にデータ処理部)を行う。 上述の実験と同時に、開発した 480nm シングルモードレーザーを用いて低温 Rydberg原子を励起し、オプティカルブロケード効果を観測する。観測は共鳴 Rydberg 準位近傍を重点的に行い、ブロケード効果に関する実験条件を精査する。 以上が遂行された後、シングル Rydberg 原子の励起を試み、シングルフォトン生成のフィンガープリントの検出を試みることを目論む。
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