光学系を改良することにより,従来よりも効率よく超解像度画像を取得できるようになった.すなわち,ビームの収差をなるべく小さくするとともに,バックグラウンドとなるダークノイズを最小限に抑えた.特にダークノイズについては,検出器の限界まで落とすことができるようになった. 昨年度までは主に,光合成色素に近いスペクトル領域に信号が現れる標準試料を用いた測定を行ってきたが,本年度は高等植物を中心に広くみられる光合成色素であるクロロフィルaについて顕微分光測定を行った.標準試料に比べ非常に大きな非線形信号が現れることが分かった.そのため,超解像度顕微鏡観測を行うためには,通常の方法とは異なる波長と時間領域のレーザー光を用いる必要があるという考えに至った.画像観測からスペクトル観測に手法を変更し,エネルギーを失活させるための経路を検討した.この手法を拡張することにより,新たな超解像度顕微鏡法の開拓につながるものと期待をしている. 本研究においては,当初,光合成色素の高速応答を顕微鏡下で観測することを目標としていたが,予算の都合によりその計画を一部変更する必要が出てきた.当初計画を将来的に実施するために,マクロ条件下ではあるが,光合成色素であるカロテノイドの非線形光学応答をスペクトル領域で観測することにも成功した.測定結果を理論モデルにより解析をしたところ,一見するとモデルが実験結果を定性的に説明できているように思われるが,詳細な検討を行うと吸収端近傍では定量的には不一致があり,エネルギー準位の再検討をする必要があるという結果が得られた. 以上の結果の一部を学会で報告を行った.近日中に論文投稿をすることを計画している.
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